門脇被告は同地裁の刑事2部、辻被告は刑事11部が審理にあたったが、判決はともに、県発注工事で「長年、談合が続いていた」などとし、談合のしくみについてほぼ同様の事実認定をした。この日の判決によると、ゼネコンと地元業者が共同企業体を組んで入札に参加する工事では、ゼネコン・地元業者それぞれで談合し、「本命」業者を決めていた。このうち、ゼネコン側の「本命」は発注者側の意向で決まり、祐二被告が出す「天の声」を辻被告がゼネコン側に伝達する役割を担っていた。
辻被告は1996年ごろから談合に関与し、98年ごろからは祐二被告の意向を本命業者に伝えるとともに、謝礼金を祐二被告に渡す役割も担っていた。
起訴事実となった下水道工事について、判決は、県土木部に強い影響力を持っていた元県土木部長(65)に、辻被告が祐二被告の意向を伝え、便宜を図らせていたとも認定。犯行は「長年培われた巧妙な談合システムの中で行われた組織的、計画的なものである」とし、受注の見返りに東急建設側から1000万円を受け取った点も悪質と断罪した。
そのうえで、辻被告については「佐藤(前)知事の選挙資金を賄うため、発注者側の窓口的な役割を担うなど、果たした役割は犯行に重要不可欠」だったと指摘。ただ、「自身の利益を得たことはない」などとし、刑の執行は猶予した。
判決言い渡し後、辻被告は、小池裁判長に「今回の事件が県民にどれだけの迷惑をかけたか、いま一度振り返って反省してほしい」と言葉をかけられると、言葉を発することなく小さくうなずいた。
判決によると、辻被告は県が2004年8月に実施した流域下水道整備工事の指名競争入札で門脇被告らと共謀し、談合。その結果、東急建設と佐藤工業の共同企業体がこの工事を8億1690万円で落札した。