利殖商法の悪徳業者が経営破たんすると、出資者の手元には債権額の数%程度しか戻ってこないことが多い。
インターネット技術を利用したIP電話事業者の「近未来通信」(本社東京)も同様のパターンをたどりそう。
昨年十二月、警視庁が同社の本社や支店などを詐欺容疑で家宅捜索。半月後、東京地裁が同社に関する破産手続き開始決定を出した。警視庁の捜査は現在も続いている。
同社は数年で約三千人の被害者から四百億円もの金を集めたと言われる。「IP電話中継局オーナーシステム」を展開していると、新聞各紙に大々的に広告を出した。オーナーになる人に大金を払い込ませ、IP電話利用者から徴収する通信料をもとに多額の配当金を払うという触れ込み。
実際には、通信事業者としての実体はほとんどなく、オーナーになった人から得た資金の大半が配当に回っていた。
東海地方の六十歳代の女性は、千数百万円以上も損しそうな状況。「知人から最初、話を聞いた。『順調に配当がある』と言われたし、会社に電話したときの対応もよかった」と振り返る。
昨年十月には「集めた資金を海外で運用して高利回りで配当する」と、虚偽の勧誘をしていた投資会社「ジェスティオン・プリヴェ・ジャポン」(東京)の社長が、詐欺の疑いで警視庁に逮捕された。
今年一月には警視庁や静岡県警などの合同捜査本部が健康食品販売「リッチランド」の社長らを詐欺容疑で逮捕。沈没船引き揚げや東欧での不動産事業などで高収益を上げる、と偽り約五百億円を集めたとされる。
今月十四日には、高利回りを約束して聴覚障害者らから多額の出資金をだまし取った、として警視庁や山梨県警が福祉機器販売会社「コロニーワイズ」(東京)の社長らを詐欺容疑で逮捕した。二十日には、株式上場予定がない未公開株を「近く上場するので、必ずもうかる」と売った投資関連会社「ワールドインベストメント」(東京)の社長らを愛知県警が詐欺の疑いで逮捕した。
国民生活センターや各地の消費生活センターに寄せられた利殖商法に関する相談件数はここ十年ほど増加基調で、本年度は十年前の三倍以上になっている(グラフ参照)。利殖商法に詳しい桜井健夫弁護士(第二東京弁護士会)は「超低金利時代が続くので、消費者が高利回りの投資話に乗せられやすい。警察や役所が動き出したときには既に被害が広がっている」と話す。
今年夏に金融商品取引法が施行される見通しで、警察が悪質業者を摘発する根拠の法律が増える。効果がどれだけあがるかは不明だが、法改正前に稼ごうという悪質業者の動きを警戒する必要がある。
悪徳商法被害者対策委員会の堺次夫会長は「団塊の世代の退職金が絶好のターゲット。業者は定置網を張って待っている」と強調する。
うまい話には必ず落とし穴があるもの。セールストークがおかしいと思ったら断固断ること、すぐに契約せずに誰かに相談することだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20070222/ftu_____kur_____001.shtml