映像のすり替えがあったのは、ヨガで血行が良くなると紹介するコーナー「冷え性は太る?ヨガで体を改善」。制作会社「ヒューマンビュー」のディレクター(37)が、編集作業の段階で、不鮮明と判断した女性タレントの指先の毛細血管映像と、自分の指先の映像をすり替えていた。同局の説明では、ヨガの後、「女性タレントの血流がよくなった」という専門家の指摘があったため、正常な血行の映像なら誰のでも良いという気持ちで使用し、そのまま放置したのだという。
テレビ東京は、二〇〇五年一月放送の「教えて!ウルトラ実験隊」(現在は終了)で、花粉症治療実験の捏造が発覚。これを受け、健康や医療などの分野は外部の専門家の助言を仰ぐことにした。ただ今回、すり替えが起きたことは、こうした再発防止策が有効に機能していなかったことをうかがわせる。
この日、会見で謝罪した菅谷定彦社長は、「外部の専門家には企画段階で相談しているが、VTR完成後も見ていただく努力をすべきだった」と苦渋の表情を見せた。
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すり替えがあった番組は、放送前に四回の試写が行われ、いずれも同局のプロデューサーが立ち会っていた。プロデューサーは「この番組は健康番組なので過剰な演出や無理な展開がないよう気を付けてくれ。データはありのままに出せ」と注文をつけていたが、すり替えには気づかなかった。
このようなチェック機能不全は、捏造が発覚した「発掘!あるある大事典2」の一月七日放送分とも共通している。同放送分も、関テレのプロデューサーが放送前、番組チェックに加わったが、取材対象者の発言の差し替えなどを見抜けなかった。
テレビ東京は、「局のプロデューサーがロケに立ち会うとか、(VTR)編集段階をチェックすれば、(捏造は)防げると思う」(藤延直道制作局長)とするが、すり替えも、「あるある〜」の捏造問題も、下請け制作会社のディレクターが関与しており「業界の仕組みを改善しなければ、再発する。根深い問題」(業界関係者)との見方もある。
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「あるある〜」の捏造問題を受け、総務省は二十一日、再発防止計画の提出を放送局に求めることを可能とする内容を今国会に提出予定の放送法改正案に盛り込む方針を固めた。すり替え問題の発覚で、今後、行政の放送業界への締め付けが一段と強まるのは間違いない。
総務省の動きに関して菅谷社長は会見で、「お互いに理性的に、将来を見すえてルールづくりをしてほしい」と注文をつけたが、問題の当事者の発言だけに説得力には乏しい。
「あるある〜」の捏造問題を受けて同日開かれた自民党の通信・放送産業高度化小委員会(片山虎之助委員長)では、番組チェック体制が機能していないとの批判や、キー局の責任の明確化を求める声が続出。日ごろは放送局の立場に一定の理解を示している片山委員長も「(放送局は)危機意識が薄い。自浄能力がない」と語気を強めており、放送業界の信頼回復に向けた取り組みは、待ったなしの状況といえそうだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20070222/mng_____hog_____000.shtml