「今までも行政指導しているが、次から次にこうした事実(捏造問題)が出てくる」。菅義偉総務相は十三日の閣議後会見で、こう苦言を呈した。
総務省はこれまで、不祥事を起こすなどした放送局に対し、放送法に基づいて「注意」「厳重注意」「警告」の行政指導を行ってきた。
ただ今回の捏造問題は世論の反響が大きく、総務省は従来の行政指導より重い、新たな行政処分が必要と判断。今国会で法改正を行う方向で検討している。
とはいえ、放送業界にすれば、このような措置は総務省の管理・監督が強まることを意味する。
総務省は二十日、捏造問題を受けてテレビ局に対して実施した「番組のチェック体制に関するヒアリング」の結果を発表した。この中で同省は、情報系番組のあり方について「科学的論拠の正しさを国民が理解できるように放送上の表現について十分注意すべきでは」と提言した。言い分はもっともかもしれないが、放送関係者にしてみると、この指摘は、編集の自由(放送法3条)を脅かすと映るかもしれない。憲法の保障する表現の自由を損なうとの懸念も伴う。
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総務相は昨秋、NHKに対し、ラジオ国際放送で北朝鮮による拉致問題を重点的に取り上げるよう命令した。命令放送については当初、言論、表現の自由を侵害すると批判されたが、総務相は実施に踏み切った。ある民放関係者はこのところの総務省の動きを「放送業界への介入が段階的に進んでいる」と危惧(きぐ)する。
総務相は関西テレビに対し、捏造問題の調査報告書を今月中に再提出するよう求めている。また、外部の有識者でつくる調査委員会も三月中旬に結果をまとめる予定。これらの報告で不適切な事実などが判明すれば、行政処分をめぐる法改正論議が活発化しかねない。ただ、こうした状況に対し、放送業界は今のところ打つ手なしの状態だ。
政治日程も不利に働いている。総務省に強い影響力がある自民党の片山虎之助参院幹事長は、これまで放送局の立場に一定の理解を示してきたが、今夏の参院選を控えて身動きが取りにくい状況。「片山さんが、総務省の動きを止めてほしいのだが……」。民放首脳の一人は、こうこぼしている。
日本民間放送連盟(民放連)の広瀬道貞会長(テレビ朝日会長)は、関テレの会員活動停止を決定した十五日の記者会見で、戸惑いを隠せない様子でこう語った。
「今回の法改正は(放送事業者の)持ち株会社やNHK問題が中心になるはずだったが、関テレ問題が出てきて、急に(行政処分をめぐる)議論が始まった」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20070221/mng_____hog_____000.shtml