大木はアンテナ鋼管で、山小屋は付属機器の収納庫だ=北海道伊達市で
竹を装ったアンテナ。枝も節もある=名古屋市で
名古屋市東部の住宅街に面した竹林に昨春、ひときわ太い「竹」が出現した。濃緑色の表面にはちゃんと節があり、四方に伸びた枝に細長い葉が茂る。実は、高さ15メートルの鋼管を竹そっくりに塗装し、鉄製の枝葉を溶接した「擬竹アンテナ」だ。
NTTドコモが地元住民と話し合い、竹林の風情を壊さないように工夫した。節の間隔はあえて不ぞろいにし、枝のたわみまで再現した力作に、近所の主婦は「少し離れて眺めれば、竹林に紛れて違和感がない」。オーダーメードのため、コストは通常型のほぼ倍かかったという。
ドコモはこのほか、合成樹脂製の樹皮や枝葉をまとった松型アンテナとログハウス風の機器収納箱をセットした「山小屋型」や、鋼管にランプを取りつけた「街灯型」などを、全国22カ所の国立公園や景勝地に設けている。
ソフトバンクモバイルは「立ち枯れシラカバ型」を長野県内のスキー場に設けているほか、広島県内の神社では基地局を境内の建物内に隠し、格子戸越しに電波を送受信させている。「携帯電話は通じて欲しいが、境内の古風な雰囲気は乱されたくない」という声に応えたものだ。
忍者型が増えている背景には基地局数の急増がある。携帯電話とPHSの契約数は1月末で1億件を突破し、全国民のほぼ8割に行き渡った計算だ。06年末には規模の大きい携帯電話の基地局だけでも約13万局に達しており、過去5年間で2.5倍に膨らんでいる。
特にここ数年は顧客争奪戦が激しくなる中、各携帯電話会社は電波の通じない「圏外」解消に奔走。山村部や観光地への基地局設置を急いでいるが、電波を効率よく送受信できる好立地ほど見晴らしがよく、武骨な鉄塔が目立つ結果となる。
ドコモは忍者型のほかにも、やぐら組みの鉄塔を鋼管1本に置き換えたり、本来光沢のある表面をつや消しや茶系色に塗り替えたりするなどの景観対策を進めている。
行政側が主導して、基地局の乱立を防ごうとする動きもある。基地局は各社の「企業戦略」に従ってバラバラに建てられてきたが、山梨県は06年度から、高さ20メートル以上の基地局を建てる場合はライバル会社に共同利用を呼びかけるよう指導。現在、新設局の2割が共用されているという。
ドコモは「今後も通話エリアを広げていくためには、景観対策は避けられない課題。基地局を目立たせない工夫に加え、基地局の総数を抑えるような技術開発を続けていく」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/0221/TKY200702210140.html