「竹中氏と言えば、安倍首相とはそれほど親密な関係になかったはず。にもかかわらず、なぜ、この時期に首相は竹中氏と会食をしたのか。実際、首相動静を見ても分かるとおり首相は夜、すぐに公邸に帰ってしまいあまり人と会わない。何か裏でもあるんじゃないか」
こう語るのは自民党有力筋の1人。これは今月13日夜に行われた首相と竹中氏の会食をとらえた感想だが、確かにここに来て竹中氏の安倍政権に対する言動が確実に増え始めている。
まずは月刊誌「Voice」(PHP研究所)3月号で、「官僚をねじ伏せるケンカ術」と題した論文を発表。この中で官僚や族議員について「彼らが議論によって、賛成に回ることはありえない」と指摘、「叩かれずに改革など絶対にできないし、抵抗勢力潰しなどできようはずもない」と、安倍政権に対する数々の助言を披露している。
今月1日、熊本市内で行った講演でも、「生意気で(改革を)やりすぎると、たたかれている人が(安倍政権には)いない」と発破をかけ、前出の首相との会食では、「改革を後退させてはいけない」と激励するなど、まるで軍師のような振る舞いぶり。
このため、官邸筋の1人も「竹中氏が安倍政権に対し、どういう役回りをしようとしているのか注目している」と語るなど、その動向に注目が集まっているのだ。
自民党長老の1人はこう指摘する。
「竹中氏は小泉改革の立役者として、国民人気はそこそこある。安倍首相としては、竹中氏を政権浮揚に利用できないか考えているのではないか」
確かに、安倍内閣の支持率下落は止まらず、好転の兆しは見えてこない。政権浮揚策としてささやかれる衆参同日選にしても、衆院で自民、公明両党で3分の2以上の議席を確保している現状を考えれば、必ずしも有利とはいえない。それどころか、「衆院は議席数を減らす可能性が高く、その減り具合によっては首相の責任問題に発展しかねない」との危険も伴うのだ。
さらに、2007年度予算案成立後の内閣改造説。柳沢伯夫厚生労働相や評判の悪い塩崎恭久官房長官らをまとめて“一掃”してしまおうというわけだが、「現内閣には首相側近といわれている人の大部分が入っており、人選に苦労するはず。町村信孝元外相などベテラン議員を入閣させると、安倍首相の顔がより見えにくくなる可能性もある」(自民党関係者)という。
そこで、にわかに浮上してきたのが、竹中氏の存在というわけ。
先の自民党有力筋はこう続ける。
「実際、竹中氏は慶応大教授という肩書だけでは飽き足らないようで、同氏サイドが外資系金融機関に顧問の就任を打診したという。もっとも同金融機関はこれを拒否して“売り込み”は失敗に終わったようだが、もともと権力志向が強い人だけに、首相の要請があれば安倍政権でも表舞台で活躍する気はあるだろう」
ただ、首相にとって、竹中氏との距離の保ち方はもろ刃の剣。与党幹部は「竹中氏が安倍政権の前面に出れば改革路線が鮮明になるが、郵政民営化をごり押しした恨みがあるだけに、かえって党内の反発を買って求心力が衰える可能性もある」と指摘する。
夏の参院選を控え、竹中平蔵日銀総裁説まで飛び交う昨今、首相は竹中氏をどの程度重用するのか。それが「改革路線」と「党内融和」の間で揺れる安倍政権の今後を占うことにもなりそうだ。
ZAKZAK 2007/02/20