労使双方の議論がかみ合わない原因は、制度が適用される対象者の線引きがあいまいだからだ。
厚生労働省がまとめた規制除外制度の案は、対象者を(1)企画開発部門など、労働時間で成果を評価できない職種(2)勤務時間を自由に決められる(3)管理職に近い権限と年収を得ている−労働者に限定している。
ただ「管理職に近い権限と年収」がどの程度を指すのかは明文化されていない。
厚労省は、与党から具体的な年収の説明を求められ「九百万円以上」との見解を示したが、経営側は「年収要件は柔軟にし、労使にゆだねるべきだ」と譲らない。実際、日本経団連は当初、年収要件を多くのホワイトカラーが対象になるよう「四百万円以上」にするよう求めていた。
民間シンクタンク、労働運動総合研究所の試算では、規制除外制度の適用対象を年収四百万円以上と想定すると、残業代とサービス残業代のカットで一人当たり年間百十四万円、千十三万人の対象者全体では十一兆六千億円が削減されるという。
このため労働側は「管理職に近い」という理由で、対象者の範囲が拡大解釈されることに懸念を示している。
安倍晋三首相は、十五日の国会答弁で「国民の理解を得ながら取り組むべき課題であり、今後も検討する」と明言、規制除外制度の導入を断念していない。
また、今国会には、規制除外制度の対象とならない労働者に対し、現行25%の残業代割増率を引き上げるための法案が提出される。
割増率が引き上げられれば、人件費増の「見返り」として、経営側が除外制度の導入を一層強く求めるのは確実。参院選が終われば導入に向けた議論が一気に高まるとみられる。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kei/20070220/mng_____kei_____002.shtml