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2007年02月19日(月) 10時00分

サッポロ、アサヒ「大日本麦酒」復活はあるのか日刊ゲンダイ

 今、最も日本企業が警戒する投資ファンド「スティール」がついに牙をむいた。
 サッポロホールディングスを友好的TOB(価格は1株825円程度、取得目標66.6%)により買収すると提案。賛同しない場合は、敵対的買収の可能性をにじませた。これに対しサッポロは、スティールから詳細を聞いた上で、外部専門家の助言も踏まえて対応を決める方針だが、スティールの提案を拒否し、全面対決に進むことになりそうだ。16日には「アサヒビールがサッポロに経営統合を提案」(読売新聞)と一歩踏み込んだ報道も飛び出し、新たな展開も予想される状況だが、アサヒとサッポロはともに「そういう事実はありません」(広報担当)と否定している。
 スティールがサッポロを標的にすることは、明星食品株でボロ儲け(TOBに失敗したものの、日清食品へ高値で売り抜けた)した昨年12月中旬からささやかれていた。株式市場では思惑買いが先行、3カ月で200円も株価が上昇(15日終値791円)。水面下のゴングはとっくに鳴っていたのだ。投資銀行は、既に競うようにサッポロに対抗策を提案済みだ。
「ホワイトナイトは、まず同業他社。しかし、サッポロは外資系のビール会社には難色を示した。一方で、国内ではキリン、サントリーが『NO』の反応。残る選択肢はアサヒ。サッポロのメーンバンクのみずほコーポレート銀行が動いていると聞いています」(外資系投資銀行関係者)
 サッポロとアサヒは、戦後分割されるまでは「大日本麦酒」として一緒の会社だった。そのため「心情的にも近い」(業界関係者)とされる。
「ビールシェア争いで、キリンの猛追を受けるアサヒにとって、M&Aは業界ナンバーワンを強固にする。サッポロの所有する恵比寿ガーデンプレイスは、地価高騰で資産価値が上がっている。高値売却が可能で、アサヒにとって悪い話ではない」(前出の投資銀行関係者)
 ただ、当のアサヒ関係者は「当社は総合酒類メーカーとしての基盤は整っていて、サッポロとのシナジーは少ない。設備や人の重複はリスク」と拒否の姿勢。
 とにかく、スティールの狙いは高値で売り抜けるだけ。
「今回はTOBをちらつかせてコストをかけずに揺さぶる高等戦術。TOBを実行する前に買い手が現れればいいわけですから」(金融ジャーナリスト)
 さて、「大日本麦酒」の復活はあるのか。またまたスティールの高笑いが聞こえてきそうだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070219-00000015-gen-ent