東京都西多摩地域の人家周辺で見られる動物の種類はどのくらい? 専修大学付属高校(杉並区)の教諭、東海林隆夫さん(40)が昨年、哺乳(ほにゅう)類の目撃情報を、住民にはがきで寄せてもらったところ、計16種類が確認された。田畑を荒らす被害を訴える添え書きが多くあった。東海林さんは「集めた情報は地域の人に役立ててもらいたい。また、可愛いだけでなく、生きていくために人里に出てこなければならない現実の動物の姿を、都会の子供たちが理解するきっかけにもしたい」と話している。(塩原賢)
はがき調査は昨年4月から12月にかけて行われ、青梅市、あきる野市、奥多摩町、日の出町、檜原村の東京都西部の2市3町村と埼玉県飯能市を対象とした。対象地域内の公民館や森林組合などに料金受取人払いのはがきを置き、住民や旅行者らが目撃した動物、日時、場所、頭数などを記入してもらう方法をとった。
青梅市を中心に調べた第1期調査(94〜96年度)、今回と同じ地域を調べた第2期調査(99〜01年度)に次ぎ、04年度に始まった第3期調査の一部となるもので、目撃された動物と件数は9カ月間で16種類245件にのぼった=表。
最も多かったのはニホンザル。奥多摩町を中心にした多摩川や秋川流域の広い範囲で見られ、「生息域は徐々に拡大してきており、食害も広がっている」という。奥多摩町で大根を有機栽培している男性からは「化学肥料で育てた隣の畑の大根は食べずに、うちのモノばかり食べる」との訴えも寄せられた。
次いで多かったシカは、これまで奥多摩町を流れる多摩川上流域の北側で目撃されてきたが、今回は南側でも見られるようになった。さらに青梅市など東側にも拡大。飯能市の住民は「年々、増えており、畑の芋が食い荒らされる」と回答した。
近年、目撃情報が急増しているのがハクビシンだ。第1期調査では7件だったのが、第2期では23件。今回も9カ月だけで19件に達した。青梅市や飯能市、奥多摩町などで見られ、数頭単位で見つかる場合も多い。
奥多摩町の住民からは「毎晩のように残飯をあさりに来る。イノシシは残飯入れのふたまでは開けていかないが、ハクビシンは執拗(しつよう)で、ふたまで開けるため後かたづけが大変」と嘆く声が添えられていたという。
国の林業政策で実がなるコナラなどの雑木に代わって杉やヒノキが植林され、山に餌がなくなってきたことなども野生動物が人里に出てくるようになった原因の一つと、東海林さんはみる。
集まった情報は「ニュースレター」にまとめて住民に配っているが、「高齢化が進む地域では、食害が耕作放棄につながっている」と危機感を募らす。
同時に、生徒らには「自分たちの近くにいる野生動物が、そこに住む住民とあつれきを生んでいるという現実を知る機会にしてもらいたい」と話している。
西多摩地域で目撃された動物と件数
ニホンザル 54
シカ 42
イノシシ 41
タヌキ 29
ハクビシン 19
ニホンカモシカ 14
リス 14
ツキノワグマ 11
テン 5
キツネ 4
ウサギ 3
ネズミ 3
アナグマ 2
モモンガ 2
イタチ 1
ヤマネ 1
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