緊急地震速報は、地震の初期微動(P波、秒速約7キロ)をとらえ、その後に来る大きな揺れ(S波、秒速約4キロ)を予測、揺れが来る前に情報を出し、被害の軽減に役立てる。昨年8月から、鉄道や病院など一部の事業者に先行的に情報提供が始まっている。
気象庁は28日に開く本格運用に向けた検討会で、国民への提供を今年秋から始める方向で最終調整する予定だ。
その検討会に向けて民放連は意見書を提出。(1)緊急地震速報を受け取った際の「心得」の周知が行われていない状況では、速報の放送により二次的被害が起きる可能性が高く、放送実施に踏み切れない(2)「心得」の周知は、政府全体で取り組むべきだ(3)「心得」の周知度を見極めたうえで緊急地震速報の一般への提供開始時期を決定すべきだ——などと指摘している。
民放連は、放送を通じて不特定多数の人々に速報を伝えた場合、どのような減災効果が、どの程度もたらされるかの十分な検証がおこなわれていない点を指摘。さらに、集客施設などで緊急地震速報が伝えられた場合、パニックが生じ、かえって被害を拡大する恐れもあるとしている。
民放連が特に懸念しているのが、ラジオでの放送だ。千葉大工学部の山崎文雄教授が運転シミュレーターを使った実験で、前を走る車にだけ地震情報を流すと、ドライバーは慌ててブレーキを踏むため、後ろを走る車の2割は避けることができず、事故を起こす結果がでている。
緊急地震速報の認知度については、電通が行ったインターネット調査で、「内容まで知っている」と答えたのは12%。民放連でも独自に調査をする予定で、「政府も自らの責任で調査を行うべきだ」としている。
気象庁は昨年10月に周知のためのリーフレットをつくり、モデル地域を指定したばかりで、取り組みの遅さが目立つ。
緊急地震速報に関する大学生への意識調査を行った日本大学の中森広道助教授(災害情報論)は報告書で、「緊急地震速報の認知度は高いとは言えない。情報は受け手がその意味を理解し、望ましい対応ができて初めて有効なものとなる。例えば、地上デジタル放送のような徹底した広報を検討することも必要だろう」としている。
http://www.asahi.com/national/update/0217/TKY200702170306.html