政府・与党は、社保庁の年金業務を(1)制度の運営責任などは厚生労働省(2)保険料の徴収や年金給付、年金相談などの実務は社保庁の後継組織となる非公務員型の公法人(3)できるだけ多くの業務を民間に委託——と大きく3分割することで合意した。
この方針をもとに厚労省が作成した素案によると、どの業務を民間に委託するか、政府は内閣官房に設ける学識経験者による第三者機関の「意見を聴く」とした。
素案はさらに通常の民間委託とは別に、公法人の業務を分割し「一部の職員を移行させる分割会社を可能とする措置、出向などの円滑な委託のための措置を講じる」との規定を盛り込んだ。
この規定について、厚労省幹部は「民間が引き受けられない特有な業務があれば、ノウハウを持った旧社保庁職員による分割会社が担当する。分割会社に人員が移ることで、公法人の要員もスリム化できる」とメリットを強調する。
だが、与党内には「社保庁から公法人に移れない人の働く場所を確保するために、厚労省が考え出したのだろう」との見方が出ている。昨年の臨時国会で廃案になった社保庁改革法案では、現在2万9000人の職員を12年度までに1万人程度削減する予定だったが、今回の解体案では、さらに大幅な削減を目指すとしており、要員対策が焦点のひとつになっている。
自民党厚労族幹部は「道路公団の『ファミリー企業』を作るようなものだ。業務の委託先が『旧社保庁』では、看板の付け替えとの批判を浴びる」と指摘。法案づくりの過程で分割会社規定の是非が焦点の一つになりそうだ。