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2007年02月18日(日) 18時34分

裁判員「選ばれる確率」地域で差 千葉は秋田の4倍朝日新聞

 法律家ではないふつうの人々が刑事裁判の審理に加わる裁判員制度では、都道府県によって裁判員に選ばれる確率に著しい格差がある。過去の事件数をもとにした朝日新聞の試算では、最大で4倍を超えることがわかった。制度上、こうした格差を完全に解消することは難しい。「負担」としてとらえられがちな裁判員への参加を「意義ある権利」として理解してもらえるかどうかが、制度の命運を握るかぎになりそうだ。

裁判員に選ばれそうな確率

 裁判員裁判の対象になるのは、殺人や放火など重大事件ばかり。最高裁が公表している05年までの3年間の対象事件数の平均を、朝日新聞が、同年の選挙人名簿登載者数で割って確率を算出した。1事件で6人の裁判員と2人の補充員が選ばれるとした場合、最も裁判員になる可能性が高い県は千葉県で、1年間に2204人に1人が選ばれる。逆に最も低いのは秋田県。9245人に1人しか選ばれない計算で、両県の差は約4.2倍。大阪は2444人に1人、愛知は2623人に1人、福岡では2758人に1人、東京は2986人に1人だった。

 千葉市に住む会社員の女性(39)は「判決にかかわるのは責任が重くてひるむ。正直、できれば当たりたくない」と話した。「2000人に1人でも9000人に1人でも、高いのか低いのかあまり実感がわかない。2000人に1人でも当たらないだろうと希望的観測を持っている」と言う。「当たるか当たらないかよりも、千葉は凶悪犯罪率が高い、つまり治安が悪いのか、ということが気になる。自宅の庭にはアオダイショウやナナフシも出て、田舎っぽくていいのになあ」と戸惑いを見せる。

 千葉県船橋市の大学院生の男性(33)は「多少の地域差はあってもおかしくないけど、これだけ開きがあるのはどうかと思う。選挙の一票という権利は軽くて、裁判員という義務は重いのが千葉県民なんですね」と不満を漏らした。

 裁判員制度は09年5月までに始まる。08年末までに、各地裁ごとに、管内に住む有権者からくじで選んだ人を翌年の裁判員候補の母集団となる「名簿」に登載。その人には裁判所から通知が届く。

 全国平均では、1年間に3501人に1人が裁判員か補充員に選ばれる。47都道府県のうち30道府県はこの平均を下回り、「裁判員に選ばれにくい地域」となっている。一方、全国平均を上回る17都府県は、首都圏や大阪、愛知、福岡など大都市圏が目立つ。

 こうした居住地による格差が生じることについて、最高裁幹部のひとりは「織り込みずみだ」と話す。「地域によって『的中率』に差があることは、全国各地で開催した裁判員フォーラムでも説明したが、特に異論はなかった」。大阪会場では、「ここは確率が高いです」と言うと、会場から笑いが起きたという。

 都道府県ごとの格差では、衆参の国会議員選での投票価値の不平等がしばしば取り上げられてきた。最高裁は06年、参院選の5.13倍の「一票の格差」を合憲としている。

http://www.asahi.com/national/update/0216/TKY200702160434.html