「会社が残業代を支払おうとしない」。1月、岐阜市内の縫製会社で約3年間働いた中国人技能実習生3人が、残業代支払いを求めて同署に申告した。
3人は31−36歳の女性。午前8時から午後9時40分まで(休憩時間40分、残業約5時間含む)働いた後、内職2時間を強いられる毎日。休日は2週に1日。「働いた分だけもらえると思ってた」(実習生)賃金は、時給で県の最低賃金675円の約半分など、本来の金額にはほど遠いものだった。パスポートに加え、印鑑、通帳は会社保管となっていた。
岐阜労基署は1人あたり約330万円の労働債権があると縫製会社に勧告した。しかし同社は「支払えない」と未払い賃金が残ったまま自己破産を申し立てた。破産申立代理人の弁護士は「資産より負債額が多いため一般的に自己破産は可能」と話しており、3人は国の立て替え制度に頼るほかすべがない。
背景には、不当雇用に結びつきやすい制度自体の疲弊、その制度にすがるしかない縫製業界の苦しい実態がある。3人の実習生はそれぞれ中国では縫製会社に勤めていた。「日本の工場技術を学びたかった」「企業は賃金を払う責任がある。許せない」「自己破産という抜け道を見逃していいのか」。怒りを胸に、本来の賃金を受け取れないまま、帰国した。
【外国人研修・技能実習制度】 技術移転により開発途上国の人材育成に貢献しようと、1993年に始まる。研修1年、技能実習2年で最長計3年の日本滞在が可能。技能実習では、実践的な技術を習得してもらうために雇用関係を結ぶが、研修中の就労は認められない。協同組合など団体が受け入れ組織となり、各企業に配置するパターンが一般的。対象職種は繊維関係など62に限定。
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