福岡市南区の九電工本社で、16日午前11時から始まった記者会見。木田富継常務、馬場崎紀文総務部長らが並んで頭を下げた。「地検の捜査に協力するとともに、調査委員会を設置して事実関係の調査をする」。用意した文書を読み上げて陳謝しつつ、「どんな違法行為で捜索を受けたかはわからない」と困惑の面持ちだった。
九州経済調査協会によると、00年以降、九州・沖縄、山口から毎年約30〜40社がアジアに事業所を新たに設置。海外進出全体の8割をアジアが占めるという。「ビジネスを進めるのに、わいろが必要なことがある」。アジア進出にかかわる関係者の間ではそんな考えが一般的だ。
ある運輸会社の幹部は「中国では通関関係者に『袖の下』を届けなかったら手続きが後回しになり、港に荷物が山積みになってしまった。わいろは必要経費とあきらめている」と打ち明ける。
福岡地検は九電工への容疑の詳細を明らかにしていないが、同社幹部は「一般論として、商談には接待など一定のつきあいは欠かせない。過剰になった可能性もある」と心配する。
アジアビジネスには、属人的な要素が強く影響するという側面もある。
九電工の容疑にあげられているフィリピンでの指紋照合システム開発事業もその一つ。政府が関与した事業でありながら、窓口となるトップの交代で、突然、交渉が進まなくなったという。
外国公務員への利益供与疑惑はしばしば取りざたされるが、国内で立件された例はない。しかし、国際的にはこうした疑惑への視線は厳しくなる一方だ。
国内外で汚職や腐敗を監視するNPO「トランスペアレンシー・ジャパン」の石井陽一事務局長は「途上国には公然とわいろを要求する役人がいる。企業の法令順守できちんと位置づけて徹底すべきだ。現地子会社だけの問題にしてはいけない」と話す。
http://www.asahi.com/national/update/0217/SEB200702170005.html