「処分を厳粛に受け止め、信頼回復に全力で取り組む。関係者に迷惑をかけたことを深くおわびする」
同行の畔柳信雄頭取は15日、行政処分を受けた緊急会見で、こう陳謝した。処分は取引関係のない法人への新規融資を7日間停止、法人営業拠点の新設も3月から半年間禁止するという重いもの。金融庁は旧三和銀行当時に始まった取引の問題を、歴代の経営者が認識しながら適切な対応を怠っていたと判断。内部管理や法令順守に重大な問題があるとして、厳罰で意識改革を促した。
今回問題となったのは旧東京三菱銀行と合併する前の旧UFJ銀行の前身、旧三和銀行の淡路支店が、1970年代から「飛鳥会」元理事長と行っていた取引。銀行側は元理事長側に対し、返済延滞にもかかわらず追加融資を行い、系列ノンバンクも含めて80億円以上の融資が焦げ付いた。
今回、金融庁が厳罰姿勢で臨んだ背景には、同行経営陣の甘すぎる認識があった。というのも、もともと同行は旧三菱東京と旧UFJの融和が進まず、これが2005年に三菱東京UFJ銀行が誕生しても、放置されることにつながった。
事件発覚後も、旧UFJ出身の役員に責任を取らせようとする動きがあったという。「期に乗じた姑息な動きが、これを知った金融庁の逆鱗に触れた」(同行関係者)という見方もある。
畔柳頭取は「過去の経営者の責任は私も含め重いものと認識している」と語ったものの、進退については「信頼回復を実現するのが私の責任」とポスト維持の方針。しかし、「メガバンクは法人税も払わず巨額な利益を得ている」「顧客への利益還元が不十分」などの批判が多いなか、不祥事続きの異例の事態が、「経営」の構造的問題となれば、安易な処分では事態は収まりそうにない。
★飛鳥会事件とは
大阪市東淀川区の財団法人「飛鳥会」理事長を務め部落解放同盟支部長だった小西邦彦被告が、市開発公社から委託されていた駐車場管理業務をめぐり、財団の収益1億3120万円を着服するなどした事件。同被告は業務上横領などの罪に問われ、1月24日に大阪地裁で懲役6年の判決を受けた。三菱東京UFJ銀行の行員も事件に関与したとして逮捕されたが、起訴猶予処分となった。
ZAKZAK 2007/02/16