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2007年02月16日(金) 22時37分

「生活保護 選別許されぬ」朝日新聞

 北九州市の生活保護行政を調査した生活保護問題全国調査団(団長=井上英夫・金沢大教授)は15日、市保健福祉局が示した「(生活保護行政の)適正実施に努めている」とする回答書に反論する見解をまとめた。20日に新市長に就任する北橋健治氏は、選挙戦で従来の生活保護行政を「闇の北九州方式」と痛烈に批判しており、対応が注目される。

 学識経験者や弁護士でつくる調査団は昨年10月、北九州市で現地調査を実施。福祉事務所での申請書交付の在り方などをめぐって「組織をあげて法律違反が行われている」と市に質問状を提出した。市が昨年12月、回答書を示していた。

 生活保護の申請前に行われる面談相談について、市は「申請が必要と思われる人には申請を助言している。受給要件を欠くと思われるような場合でも、申請意思のある人からは申請を受け付けている」とする。

 しかし、調査団は「受給要件を満たしている人以外は、明確な申請意思が示されなければ申請を受け付けない、との誤解を招きかねない」と指摘。「申請が必要かどうかは相談者が判断することであり、福祉事務所が選別することは許されない」と理由を挙げた。

 また、市は申請をすぐに受け付けない理由について「機械的に申請を受け付ければ、明らかに保護適用外の人に対しても預貯金などプライバシーにかかわる諸調査が行われるなど、不利益になる場合がある」と主張する。これに対して調査団は「受給要件を満たしているかどうかは、申請後の資産調査を経なければ分からない。最も大切なことは不透明な事前審査を排除し、行政行為の透明性を確保することだ」と反論する。

 相談者の依頼で、弁護士など第三者が同席できるかも大きな論点だ。市は「個人情報保護などの観点から、原則として『相談者と面接員』により行うことが適当。申し出があれば本市の原則を説明し、相談者の意向を詳しく確認して同席の必要性を判断する」とあくまでも限定的であるとの姿勢で、「窓口に『本人からの要望があれば、どなたでも同席できる』と掲示する考えはない」と強調する。

 これについて調査団は「福祉事務所に同席の可否を決定する権限があるような誤解を与えかねない。第三者の同席を拒む法令上の根拠は何一つ存在しない」と反論。「個人情報保護は、公務員である面接員が相談内容を漏らしてはいけないという意味であり、一般市民の相談者に守秘義務はない。同席を求めるなら相談を受けないという対応は、生活保護法で保障された『申請権』を侵害するものだ」と批判している。

 北橋氏は選挙公約で「(門司区の)孤独死事件などを踏まえ、生活保護行政を検証し、人権を尊重した的確なセーフティーネットの整備を進める」と主張。告示前にあった立候補予定者による公開討論会では「孤独死や生活保護行政への批判が起きた時、謙虚に事実を認め、内部調査をして市民に十分な説明をしただろうか。いまの市幹部の考え方は硬直的すぎるのではないか」と市の対応を批判していた。北橋氏が調査団の指摘をどう受け止めて対応するかが注目される。

http://mytown.asahi.com/fukuoka/news.php?k_id=41000000702160002