県発注工事を巡る談合事件で、東急建設の元東北支店副支店長門脇進被告(63)に対し、東京地裁(毛利晴光裁判長)は15日、懲役1年執行猶予3年(求刑懲役1年)を言い渡した。判決では「福島県の公共工事では、長年にわたって官製談合が繰り返されており、本件はその一端に過ぎない」として、ゼネコンと地元業者の根深い談合体質にも言及し、県内の官製談合の構図を明らかにした。
判決によると、門脇元副支店長は、02年ごろから県発注工事を受注しようと、ゼネコン間の窓口だった設備会社社長辻政雄被告(60)に陳情を繰り返し、04年6月に県北流域下水道工事受注のため、辻社長に500万円を手渡した。辻社長から「今度の工事がんばって下さい」などと言われたことから、本命業者になる了解が得られたと考え、ゼネコン間の調整役をしていた奥村組の担当者に調整を依頼した。
一方、地元側では03年4月、県建設業協会の県北支部の有力業者8社で談合し、佐藤工業を本命業者に決定。奥村組が中心となって談合し、東急建設と佐藤工業の共同企業体(JV)が、8億1690万円で落札した。
門脇元副支店長は落札後にも、選挙費用の名目で、辻社長を通じて知事実弟で前縫製会社社長の佐藤祐二被告(63)に対し、500万円を譲渡。同工事入札の前後で佐藤前社長に計1千万円が渡っており、毛利裁判長は「官製談合の悪弊が如実に現れ、厳しい非難に値する」と指摘した。
また判決では、ゼネコン間と地元間で別々に本命業者を選び、本命同士がJVを組む形での談合が、同工事の以前から恒常的に行われてきたことも示された。
ゼネコン側は佐藤前社長や辻社長から伝えられた「天の声」を受け、鹿島の担当者が仕切り役となって談合を行い、地元業者側は建設業協会の各支部長が仕切り役を行っていた。
毛利裁判長は「天の声がどこからどのように発せられるかは解明されていないものの、知事と密接に関係する人物や県庁幹部職員OBが絡んでいることに疑いはなく、官製談合であることは明らか」としている。
門脇被告の弁護人によると、同被告は控訴しない方針。
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