日本脳神経外科学会が昨秋、同症の診断基準づくりの研究着手を決めた段階で、病気としての医学的判断は確立されていない。激しい頭痛やめまいなどが続き、職場や学校に行けない患者も多いが、軽い頸椎(けいつい)ねんざの診断から、仮病による欠勤、不登校と誤解されるという。登校しても授業中のうたた寝や保健室通いなどから怠け者扱いされる子どもも多く、患者団体らは「教職員は同症への理解を深めてほしい」と訴えている。
また、有効とされる治療法は自賠責保険の適用外。このため「国が認めない治療費は支払えない」などと、医療費の支払いを拒否する損保会社が後を絶たない。健康保険も適用外で患者負担が大きく、自賠責保険の適用を国交省に求めることにした。
十五日は、患者の代理人で特定非営利活動法人(NPO法人)「鞭(むち)打ち症患者支援協会」の中井宏代表理事らが、冬柴国交相に要望書を渡した。冬柴国交相は「学会の診断基準ができた後に自賠責保険の適用などを検討したい」と、前向きに応じた。
埼玉県患者会の男性患者(56)によると、「六年前の交通事故で発症し、激しい頭痛や吐き気、めまいや耳鳴りで働けなくなり解雇された。計約三百万円の治療費は預金を取り崩すなどしたが、交通事故の加害者・損保会社側は支払いを拒否し、係争中」という。
<メモ>脳脊髄液減少症 交通事故やスポーツなど外部からの衝撃で脳を保護する脳脊髄液が漏れて発症し、頭痛や耳鳴り、思考力低下、倦怠(けんたい)など多様な症状がある。医学界では同症の存在を疑問視する声も強い。患者総数は不明だが、頸椎ねんざの患者の一定割合がこの症状とされる。首や腰に患者本人の血液を注入し、凝固作用で髄液の漏出を止める「ブラッドパッチ療法」で約7割の患者の症状は改善するが、回復せず社会復帰できない患者も多いという。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070216/eve_____sya_____005.shtml