【投信会社が大変】
日経平均株価は、日経新聞社が算出して公表している。同社が選んだ225銘柄の株価をもとに算出しており、その225銘柄の中には日興も含まれている。
その日経は、日興株が監理ポスト入りした昨年12月18日、すぐさま同社株を日経平均の構成銘柄として当面維持すると発表。今後、構成銘柄から除外するかどうかは、東京証券取引所の審査動向を見極めた上で決めるとした。東証は3月中旬をめどに、日興を上場廃止にするかどうかを判断する。
「上場廃止のおそれがある銘柄を、日本を代表する225銘柄の中に入れておくのはいかがなものか。日経の見識が問われる。もし日興が上場廃止になったら、投信会社やそこに投資する投資家が被害を受ける可能性がある」(市場筋)
特に迷惑しているのがETF(上場投信)と呼ばれる投資商品を持つ投信会社だ。
ETFとは、日経平均やTOPIX(東証株価指数)などに連動するように作られた、上場している投信のこと。株価指数を売買するようなイメージで、現在の株価水準なら1単位当たり18万円弱で取引できる。
日経平均に連動するETFを組成した投信会社は、日経平均の構成銘柄と同じような現物株を保有することになる。そのため、上場廃止のおそれがある日興株でも、日経平均の構成銘柄になっている以上は保有せざるを得ないのだ。
投信会社の幹部からはこんなブーイングも聞こえてくる。
「日経平均連動型のETFは、日経平均に連動するように組成しなくてはならず、日経平均との乖離(かいり)率が一定以上になると、そのETFは上場廃止になってしまう。本来なら、監理ポスト入りした銘柄は組み入れたくないが、日興株を外すと、日経平均と乖離してしまう可能性もあるため、仕方なく日興株を組み入れている」
【形骸化】
要は、上場廃止のおそれがある監理ポスト入り銘柄を、日経平均算出の構成銘柄から外すようにしておけば、こうした悩みは解決するはず。そのあたりはどうなっているのか。日経の公式ホームページをのぞくと、次のようなルールが定められている。
≪監理ポスト入りの銘柄については原則として除外候補としますが、除外の実施については、事業の存続可能性や上場廃止の可能性など状況を判断した上で決定します≫
そこで日経は、日興株を構成銘柄から除外するかどうかは、東証の審査動向を見極めた上で決めるとしたわけだが、こうした対応に首をかしげる市場関係者は多い。
「ETFをやっている側からみれば、日経新聞社は『監理ポスト入りの銘柄は原則として除外』というルールを自ら形骸(けいがい)化させているようにみえる。日興株は不正会計で監理ポスト入りし、その後、不正が組織的だったことまで判明したわけだから、日経平均の構成銘柄から除外するのがスジだ」
それでも日興株が除外されない理由について、外資系証券幹部はこう言ってはばからない。
「日興株が日経平均の構成銘柄から除外されることになると、ETFなどのインデックスファンドから機械的に数千万株ほどの(日興株の)売りが出てくるのは間違いない。日経平均と連動するように組成されているファンドは、構成銘柄から除外される銘柄を自動的に売るようになっているからだ。そうなれば、日興株は大きく値を崩すことになる。除外しないのは株価対策という意味合いもあるのでは」
日興の不正会計問題は意外なところに波紋を広げているようだ。
ZAKZAK 2007/02/15