「銀行より高い利息を払う」などと聴覚障害者に手話で持ちかけ、出資金名目で老後の生活資金などをだまし取っていたとして、警視庁と山梨県警の合同捜査本部は14日にも、東京都港区の福祉関連会社「コロニーワイズ」の小林洋子社長(55)や社員ら数人を詐欺容疑で逮捕する方針を固めた。
同社は2000年ごろから十数都県の聴覚障害者など約250人から総額約22億円をだまし取った疑いが持たれており、捜査本部は、詐取した資金を同社の借入金返済などに使っていたとみて追及する。
関係者によると、小林社長は、耳が不自由な家族がいることなどから手話が巧みで、福祉関連機器の販売を通じて知り合った聴覚障害者やその家族らに、「銀行は金利が安い。私に金を預ければ年6%の金利が払える」「必要な時には元本は返す。安心してほしい」などと持ちかけて勧誘。聴覚障害者に同じ障害を持つ人を紹介させては、一人あたり数百万円から数千万円の出資金を受け取っていたが、利息は最初の1、2回支払っただけで、出資者から返済を求められてもほとんど応じなかった。
調べによると、小林社長らは2000年、息子が社長を務める福祉施設運営会社を設立。神奈川県湯河原町の温泉ホテルを1億数千万円で買収し、障害者などを対象とする福祉施設をオープンさせたが、入居者が半分にも満たなかったことで赤字経営に陥り、施設は昨年春に売却された。また買収資金を高金利の貸金業者から借りていたことなどから、集めた資金は、この施設の運転資金や借金返済に充てられたとみられる。
コロニーワイズをめぐっては、昨年8月31日に山梨県内の聴覚障害者6人が詐欺と出資法違反の疑いで同県警に刑事告訴し、翌9月1日には、警視庁が湯河原町の福祉施設など計11か所を捜索していた。
山梨県警に提出された告訴状では、手話を使える健常者のことを聴覚障害者は「自分たちのために手話を習得した人」と考え、信用しやすいとしている。捜査本部では、小林社長について、そうした心理につけ入って金をだまし取っていたとみている。被害者の多くは40〜70代で、老後の生活のために貯蓄してきた年金などを同社に預け、日々の生活に窮するようになった人も少なくないという。