秋田駅前ではかつて、放置自転車が車道さえ占拠し、救急車の通行を妨げる事態も発生していた。こうした「迷惑駐輪」を一掃しようと、市が18年前に施行したのが、独自の自転車放置防止条例。周辺に禁止・規制区域を設定し、委託のパトロール員が見回り、禁止区域の放置自転車は即撤去、規制区域については警告札を張ったうえで約2時間後に撤去することにしている。
一般的には歩道などの迷惑駐輪が「放置自転車」とされるところ、市は区域内で警告札を張った自転車を放置自転車としてカウント。条例や設定区域を持つ県内市町村は今も秋田市しかない。
市生活課によると、01〜04年度の放置数は9000〜1万4000台で推移していたが、05年度には、市道が整備された区域外の駅北側で迷惑駐輪が続出。急きょ規制区域に指定したことから、前年度比約2万台増の3万4392台に激増する結果となった。
片や撤去数は01年度以降、増加の一途をたどっており、05年度は1994台と大台突破寸前の勢い。
市はこれまでに、駅東(2650台)、駅西(800台)、アトリオン広場地下(530台)に駐輪場を設置。昨年5月には、県が日赤・婦人会館跡地にオープンさせた駐車場に約30台分の駐輪場を併設するなどしてきたが、思うような効果が上がっていない。
撤去した自転車について市は、6か月間保管して引き取りを待つが、所有者が現れない場合は、スクラップされるか、シルバー人材センターでリサイクルされる取り決めになっている。
引き取られていく自転車はしかし、毎年度6割程度。05年度も1160台にとどまっている。引き取るには手数料1000円がかかる。
防犯登録などから所有者を割り出して連絡しても、「新品を買った」「壊れているので不用」などと引き取りを拒否するケースが多い。中には「盗まれたものなので、自分に責任はない」などと主張する所有者もいるという。
自転車を粗大ごみとして出す場合には500〜800円程度の料金がかかるが、放置自転車なら、市が無料で回収してくれる。「撤去されても、所有者が必死に探しているわけではない。使い捨ての感覚」。市の担当者は「特効薬も即効薬もない。モラルに訴えるしかないが、糸口は見えない」とこぼした。
◆「市の巡回こそ迷惑」地元商店
対策に苦慮する市に対し、地元商店には、迷惑という感覚はあまりない。むしろ、「頻繁な巡回こそ迷惑」と語るのは、小物販売店の女性店員。「平日の客層の7割は高校生で、自転車での来店が多いのは当たり前」というわけだ。
雑貨店の店主は「再開発と言う前に、駐輪の禁止と規制が駅前の地盤沈下の一因になっていることを市は認識すべき」と話した。
ある日の午後2時すぎ、駅北側の市道。迷惑駐輪をしていた女性に話を聞くと、「自転車利用者はパトロールのサイクルを知っており、2時間以内に戻れば大丈夫」との答えが返ってきた。「自転車は、車の違法駐車ほど迷惑ではない」とも女性は話した。