日米関係が悪化した昭和の初め、両国の友好親善を願って米国から贈られ、その後の太平洋戦争を経て約80年間、日田市の三隈幼稚園に大切に保存されてきた「青い目の人形」が15日、お披露目され、園児らと同市内を初めてパレードする。(石崎晃一郎)
「ひなまつりの伝統行事がある日本の子どもたちに、米国の人形を贈って、ひな人形と一緒に飾ってもらえれば、きっと両国の友情や交流は深まるだろう」。この青い目の人形たちは戦前、日米関係が悪化するのを憂えた親日家の米国人牧師がこう全米に呼びかけたのがきっかけで作られた。
1927(昭和2)年には、全米から集まった青い目の人形約1万2千体が、日本へ船便で届けられたという。海を渡ってきたこの人形たちは全国の小学校や幼稚園などに配られた。日本からもお礼として、高価な市松人形58体が米国へ贈られ、現在も同国内に44体が残っているという。
41年の日米開戦後は、多くの青い目の人形も敵視されて、廃棄された。だが、「人形に罪はない」と大切に保管されたものもあり、現在も、全国で340体、県内には5体が残っており、そのうちの1体が三隈幼稚園で保存していた人形だ。
当時、米国側が人形に持たせた「パスポート」には、名前は「キャロリン・ベッカー」で、「オハイオ州出身」と書かれている。贈られてきた人形の一つと見られるものの、この「パスポート」が残っていない青い目の人形1体も一緒に同園に保管されている。
パレードは、同市観光協会主催の「天領日田おひなまつり」の開会式典に併せて行われ、15日午前10時半前にJR日田駅前広場を出発。着物姿の園児が2体の青い目の人形を持って人力車に乗り、他の園児や父母らも一緒に、同市中本町のひな人形の展示会場まで約800メートルを練り歩く。
展示会場を提供している、同協会理事の原正幸さん(59)が昨年購入した、当時作られた市松人形も展示される。原さんは「暗い時代を乗り越えた青い目の人形のことを多くの人たちに知ってもらいたい」と市民らのパレード参加を呼びかけている。
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