新年企画のタイトルは「団塊が源流 カルチャー再評価」。一月四日掲載の第三回は、団塊世代の青春時代に放送が始まったラジオの深夜番組に着目。それに影響を受けた若い世代が今、地域でミニFM局を開局し、ラジオの新たな可能性を探る姿を追った。
稲垣さんは十年以上前から、子どもたちとともに地元の公園を小鳥がすみやすい環境にする活動にかかわってきた。記事を読み、「ラジオを通じても地域に貢献したい」と開局を決意した。ミニFMは、電波法で規制されない受信範囲百メートル程度の微弱電波によるFM放送。免許は必要なく、簡単な機材で開局できる。
ところが、出版社の編集者だった稲垣さんは、機械が大の苦手。そこで、日野エフエムの“局長”大川真人さん(33)に協力を求めた。一月下旬、予算に基づいて大川さんが機材を選び、稲垣さんの自宅に放送設備を整えた。大川さんは「父と同じ世代の稲垣さんが、アクティブに取り組む姿に熱い思いを感じた」と振り返る。
出演するのは、区立千早小の小さな“女子アナ”たち。稲垣さんは、機器を操作する裏方に徹する。今月三日の第一回放送は、四年生の守屋日向さん(10)が、一月に学校で上演した学童疎開がテーマの演劇を紹介。稲垣さんが事前に録音していた劇のもようを流した。
放送局の周波数は、看板通りの八八・〇メガヘルツ。放送は毎週土曜日午後三時から一時間ほど。十日の放送では、三、四年生の子供たちが、初回放送に対する地元住民の反響や公園ボランティアの活動を伝えた。本番中は真剣な表情の“女子アナ”たちも、放送後は「かんたーん」と余裕の表情。親や祖父母らのリスナーも多く、すべり出しの評判は上々だ。
地域に根ざしたミニFMは、各地で開局が相次いでいる一方、活動が長続きせずに自然消滅してしまうケースも多い。大川さんは「みんなでつくるみんなの放送局から地域の教育や防犯などに役立っていくといいですね」とエールを送る。
稲垣さんは「公園ボランティアの活動もずっと続けてきた。そうした活動があれば、発信し続けていくことができるのではないか。地域の人の心を結ぶよすがになれれば」と力を込めた。
※〓は金へんに英
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tko/20070212/lcl_____tko_____000.shtml