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2007年02月10日(土) 23時17分

選挙違反、有権者も問われている 朝日新聞

 つがる市議選の投開票が終わり、失意に暮れる落選した前市議のもとに、支持者からわびの電話が入った。「ごめんなさい。家族がほかの候補に入れてしまった」

 投開票日の直前に、ほかの陣営の運動員が投票を依頼し、カステラを置いていった。切ろうとしたら、下から「福沢諭吉」が現れた。この「おみやげ」に、家族が心変わりしてしまった、という。

 「こんな話が次々と飛び込んで、ますます気がめいる」と前市議はぼやく。

 当選した佐藤仙人議員(48)の運動員2人が5日、現金買収などの公職選挙法違反容疑で逮捕された。県警は「氷山の一角」と見ている。

 新市となって、当選ラインが大幅に上がり、激戦となったこの選挙。有権者は、何を基準に投票したのだろうか。興味深いデータがある。

 1・04対3・9。

 当選した現職23人と落選した現職10人の市議会での一般質問の平均回数だ。当選した現職の中には、つがる市が誕生した05年2月以来、質問なしが12人もいる。

 つまり、米軍のXバンドレーダーや福祉・医療を巡る議論など、議会内での発言が活発な「物言う議員」が、有権者から評価されなかったことになる。

 「そりゃそうだ。議会の中のことなど地域の人は知らない。それより会合にこまめに出て顔をつなぐ方が票になる」と、当選した現職の一人は言う。

 議会内の活動より、議会外の活動の方が有権者から評価されるとなれば、候補者は「場外戦」に力を入れ、なりふり構わぬ「諭吉」の攻勢が横行する。今回はそんな選挙戦だったのだろうか。

 有権者だって、「金で動く機械」と思われるのは心外だろう。

 しかし、「50票持っているが、いくら出すか」と言い寄る人や、候補者が支援を要請すると、「応援するが、ただではだめ」と見返りを要求する人もいるという。複数の落選者が証言した。

 「異常な選挙だった。これからは、金がないと当選できないのだろうか」。落選者の疑問は、有権者にも向けられている。有権者が議員の議会活動を見ずに、しがらみや「おみやげ」に引きずられて投票すれば、つけは自分たちに返ってくる。統一選を控えたほかの市町村にとっても他人事ではないはずだ。

(米沢信義)

http://mytown.asahi.com/aomori/news.php?k_id=02000140702100001