15人が死傷したリンナイ製湯沸かし器による一酸化炭素(CO)中毒事故では、利用者の換気が不十分だったことが事故原因として浮上している。しかし、メーカー側や経済産業省が過去の事故を速やかに公表して注意喚起をしていれば、少なくとも今月の死亡事故を防げた可能性が指摘されている。
一方、被害者からは「技術的な問題について徹底的に調べて欲しい」との声が出ている。
計5件発生した事故のうち、東京都豊島区池袋本町で2003年10月に起きたケースでは、アパート2階に住む一人暮らしの無職女性(当時70歳)が死亡した。警視庁池袋署などによると、同月26日午前8時過ぎ、女性宅を訪問したホームヘルパーが、台所付近の床に女性がうつぶせに倒れているのを発見、119番通報した。
消防隊が室内に入ると、ガスのにおいがしたため、同署と東京ガスで調べたところ、台所に設置されていた湯沸かし器を使用した形跡があったものの、換気扇は作動しておらず、窓も閉め切った状態だった。行政解剖の結果、死因はCO中毒と判明。湯沸かし器には、「必ず換気を」と書かれたシールがはってあり、同署では、換気が不十分だったため、COが発生して女性が死亡したと判断した。
荒川区西日暮里で2000年1月に起きたケースでは、そば店経営男性(54)の自宅で、姉妹3人が病院に搬送された。
男性によると、長女(同24歳)が小型湯沸かし器を使って洗い物をしていたところ、突然座り込み、気分が悪いと訴えた。騒ぎを聞き、台所隣の寝室に寝ていた三女(同21歳)と四女(同18歳)も起き上がろうとしたが、フラフラで歩けない状態だったという。
3人は救急車で病院に搬送され、いずれもCO中毒と診断。三女は1週間、ほかの2人は2日間入院し、湯沸かし器は事故の翌日、ガス会社が新しいものに交換した。その日は寒く、普段は使っていた換気扇を回していなかったといい、男性は「換気扇を回せば事故にならなかったと思う。使う側も気を付けなくては」と話す一方、「技術的な問題があったのなら、製造社側で徹底的に調べて欲しい」としている。
今回の一連のリンナイ製湯沸かし器事故を巡る企業や行政の対応について、識者の目は厳しい。
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任理事の秋庭悦子さんは、「消費者側が説明書をよく読んでいない場合があるのは事実。ただ、死亡者まで出ている以上、リンナイは早期に情報を公開し、消費者に危機感を持たせるべきだった」と指摘。製造物責任(PL)法に詳しい杉浦英樹弁護士も、「メーカーには事故情報を広く公開し、再発防止を図る責任がある」と話す。
事態を把握しながら公表しなかった経産省についても、森岡孝二・関西大教授(企業社会論)は「監督官庁として無責任。原因がはっきりしなくても、消費者の安全や安心のために早い段階でリンナイをきちんと指導し、消費者にも警告を発するべきだった」と話している。