番組内の約10分間のコーナーで、国際科学振興財団理事の大橋力さんらのグループの論文をもとに、2万ヘルツ以上のハイパーソニック音を聞くと脳にα波が生じるという説を紹介。その後、別の研究者が「α波が出ると集中力が高まり、その結果、記憶力も高まる」と述べる場面を放送した。
さらに、ハイパーソニック音はオルゴールの音やコオロギの声などに含まれるとし、小学生の女児にオルゴール、別の女性にはコオロギの鳴き声を聞きながら算数などの勉強をしてもらい、1週間後のテストで点数が上がったなどと報告した。
TBS広報部は週刊新潮の取材を受け、見解などを示した。その中で「頭の良くなる音」と司会が語り、テロップでも表示したのは「バラエティー番組とはいえ、表現上行き過ぎていた」などとわびた。
論文は00年に米国の学術誌に発表された。同部によると、昨秋、このコーナーを制作した制作会社がグループに紹介したいと申し出たが、「記憶力向上と結びつけることはできない」と断られたという。
経緯に関し、同部は「研究者に直接了解を得ずに放送してしまったことについて、おわびします」とする一方、「個々の論文やコメントの趣旨を変えていないので捏造(ねつぞう)ではない。1人の研究者が行った研究ではないが、番組として仮説を立てた。手法に問題はない」としている。
研究メンバーの一人の国立精神・神経センター神経研究所の本田学さんは「科学者のモラルとしてお断りしたのに、実験の体をなしていないような番組と私たちの研究が結びつけられ、研究の社会的信頼が著しく損なわれた」などと話し、TBSに抗議するという。
同番組は複数の制作会社が制作を請け負い、TBSのプロデューサーらが統括していた。同局のプロデューサーは論文使用を断られたことを把握していなかったという。3日の視聴率は6.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だった。
http://www.asahi.com/national/update/0207/TKY200702070367.html