起訴状などによると、星被告らは昨年四月十二日、同市緑区の銀行で、同区に住む知的障害者の男性名義で不正に取得した運転免許証を使って銀行口座を開設し、預金通帳一通をだまし取った。
星被告らは知的障害者約十人分の免許証を不正に取得。口座開設や携帯電話の契約、消費者金融からの借金を繰り返していたとみられ、県警はこれらが振り込め詐欺に悪用された可能性があるとみて調べている。
県警によると、星被告らは障害者通所作業所から障害者を尾行し、郵便物から名前や生年月日を特定。区役所で本人らを装って住民票を取得後、その人になりすまして原付きバイクの試験で免許証の交付を受け、口座開設などの身分証明として利用していたという。
星被告は「知的障害者は免許を持っていないことが多いので、犯行がばれにくいと思った」と供述しているという。
■本人確認求めぬ 制度に抜け穴
神奈川県警が摘発した、知的障害者になりすまし運転免許証を不正に取得した事件。背景には、免許取得時に書類などで本人確認を求めない現行法の抜け穴があった。
「道路交通法施行規則」で、免許申請時の必要書類として定めているのは、「本籍入りの住民票の写し」と写真、所定の申請書のみ。窓口では、本人確認書類の提示などは求めていない。
同県警運転免許本部の担当者は「書類のほか、生年月日を口述してもらい、写真と目の前の本人が一致すれば試験が受けられる」と説明。「本人確認をしたいのはやまやまだが、施行規則で定められていない以上、そこまで求められない」と苦渋をにじませた。
一方、警視庁では「他人の名義を使用して受験する事案が発生している」として、住民票以外にもパスポートや健康保険証、写真付きの学生証など身分を証明する書類の提示を求めている。しかし、全国的には極めて例外で神奈川県警をはじめ、各道府県警では身分証などによる本人確認は行っていないのが実情だ。
日本知的障害者福祉協会(東京都港区)の大島謙常任理事は「身分確認を明確にしないまま住民票を出したり、免許を交付してしまうのは、制度の欠陥としかいえない」と怒りをあらわにし、「このままでは他の犯罪者にも悪用され、障害者の被害が広がりかねない。行政と地域が連携し、障害者を守らなければ」と訴えた。 (横浜支局・石川智規)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070208/eve_____sya_____005.shtml