美容外科などの医療行為をめぐり、横浜市泉区の「菅谷クリニック」が公的医療保険で診療報酬の不正請求を繰り返していたとして、厚生労働省と神奈川社会保険事務局などは近く、保険医療機関の指定を取り消す方針を決めた。
不正請求は判明しているだけで数百万円分あり、さらに膨らむとみられる。同クリニックを経営する医療法人理事長の医師(56)は元厚生省(当時)の医系技官で、不正請求をチェックする業務にも就いていた。
厚労省などは、医師個人についても、不正請求に主導的にかかわった疑いがあるとみて、保険医登録の取り消しなどの処分を検討している。
この医療法人は、同クリニック以外にも、東京都と神奈川県に計5クリニックを経営しており、同省は、同様の不正が行われていなかったかどうか調べる。
関係者によると、菅谷クリニックでは、〈1〉保険適用ではないレーザー照射によるほくろ除去を行ったのに、保険適用の腫瘍(しゅよう)摘出をしたことにした〈2〉ニキビの跡をレーザー照射で目立たなくしただけなのに、傷跡の引きつりを治療したことにした——などの方法で不正請求を繰り返していた。厚労省は、昨年3月から14回にわたって監査を実施。患者側からも治療内容について事情を聞いてきた。
その結果、同省は既に数十件、数百万円分の不正請求を確認。引き続き過去5年分のすべての医療行為について、同様の不正がなかったかどうか同クリニックに自主点検させたうえで、不正に得ていた診療報酬を保険者に返還させる。
この医師は、1985〜90年、厚生省に勤務したことがあり、医療保険の不正請求をチェックする保険局医療指導監査室に在籍したこともあった。
同クリニックは、99年の開設で、民間信用調査会社によると、医療法人の2005年の売上高は約29億円。この医師は、「シミ取りなどに訪れた人の中には、腫瘍など保険で治療できる疾患のある人もいる。一緒に治療してほしいという場合に、そちらについて保険を使っていただけだ」として、不正請求を否定している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070207i304.htm?from=main3