年度内に県など 安全確認道半ば
1月25日に発覚した京都市内のホテルの耐震強度不足問題。アパグループ(本社・東京)は水落光男・1級建築士が手がけた9ホテルの営業を3月から停止するなど波紋が広がっている。県内には田村水落設計が関与した物件の7割が集中している。県と富山、高岡両市は6階建て以上の建物について、構造計算書の再確認にとどまらず、県建築設計事務所協会に委託して年度内に計算ソフトを使って再計算する方針だ。
これまで京都府や千葉県で耐震強度の不足が判明した物件は、10階から12階建て。いずれも民間の検査機関が建築確認をしていた。
県内の100件余りの調査対象のうち、半数以上の71件が1、2階建ての低層物件だが、6階以上の物件も12件ある。その中には9階建てのホテルや、14階建てのマンションも含まれる。
対象物件のうち、民間が建築確認した物件は2件だけ。全国的にみると04年度には、民間の確認件数が自治体の件数を上回っており、その少なさが目立つ。
背景には県内には民間の確認検査機関が一つしかないことがある。全国を対象にしている機関が県内の建物の検査をすることもあるが、「まだまだ少ないのが現状だ」(県建築住宅課)という。
県や富山市などは、「ほとんどの建物は自治体が責任を持って建築確認した。見落としはないと考えている」と話す。しかし、姉歯秀次元建築士による耐震偽装の場合、愛知県などは偽装を見逃したまま建築確認を出していた。
現在、進めている再調査では、構造計算書を手で書き換えたり、一部分を違う結果へ差し替えたりしていないか確認。さらに、構造図と計算結果をつきあわせながら、不自然な点がないかチェックしている。
その上で、県などは6階建て以上の建物で安全確認ができていない9件について、県建築設計事務所協会に委託して再計算する方針だ。仮に不審点が見つかった場合、水落氏からの聞き取り調査や第三者機関の検証が欠かせず、建築住宅課は「最終的な安全確認はまだ時間がかかる」としている。
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「耐力ある」建築士、姿勢変えず
水落建築士は6日、アパグループがマンション工事の中止やホテルの営業停止を発表したことについて、富山市内の事務所で「安全確認できるまで自主的に休業しようと判断したのだろう。自分なりに自信を持って設計している」として、これまで通り耐震強度に問題はないとの見解を示した。また、安全確認に積極的に協力する姿勢を示した。
新潟県三条市が安全性に疑問があると発表したマンションについては「2階の耐震壁1枚に剪断(せん・だん)破壊を引き起こす可能性があると判断された」と説明。しかし、建物の変形量の見方に違いがあるとして「ちゃんと耐力はある」と反論した。同市に説明書類を送り、追加の資料も作成中だと説明した。
水落建築士は「偽装や強度不足と指摘されたことについては証明したり、最後までしっかり活動したりしたい」として、県内も含め自治体の求めに応じて資料の提出や説明をして、安全検証に協力すると話した。
水落建築士は、県内では構造設計の第一人者とされる。構造設計の専門家たちでつくる日本建築構造技術者協会(JSCA)の建築構造士は全国で約2千5百人。県内では水落氏を含め11人しかいない。
県耐震診断等評定委員会のメンバーで、古い建物の耐震診断を行っていた。県によると、現在もメンバーだが、千葉県のマンションの耐震強度問題が昨年5月に浮上して以来、委員会への参加を自粛してもらっているという。
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