環境リサイクル企業「イー・エス・アイ」(休眠中)が、取引先から手形をだまし取ったり、架空債権を担保に台湾系金融機関から融資を受けたりして、約5億円をだまし取っていた疑いがあることが、関係者の話で分かった。
東京地検特捜部は、イー・エス・アイ社長(62)をすでに聴取するなど、詐欺容疑で詰めの捜査を進めている。
同社は、循環型リサイクル事業に取り組むベンチャー企業の先駆けとして注目を集めたが、2004年の破たん直前に多額の増資を行うなど、不透明な資金集めが指摘されていた。
関係者によると、同社社長は04年3月、東京都品川区の当時の本社事務所内で、パチスロ遊技機メーカー最大手「アルゼ」の子会社「ワイズテック」(鳥取県米子市)の社員に対し、「資金繰りが苦しいので、手形を振り出してほしい。売掛金の回収で返済できる」などとウソをつき、ワイズテック名義の約束手形18通(額面計1億8900万円)や現金3000万円をだまし取った。
また、イー・エス・アイは、取引先十数社に販売したリサイクル機器の台数を水増しするなどして、多額の売り掛け債権があるように装い、この架空の債権を担保に、台湾系金融機関から計約3億円を融資させた疑いも持たれている。
同社は、取引先への請求書を偽造することで、多額の売り掛け債権があるように見せかけていた。関係者によると、請求書の偽造などに関与した元社員らは、特捜部の調べに対し、「社長の指示で書類を偽造した」と認めているという。
元社員の一人は取材に対し、「実際の取引を100倍ぐらいに水増しして請求書や納品書を偽造し、金融機関から3億円近い融資を受けた」などと打ち明けた。
イー・エス・アイは、ワイズテックや金融機関との取引直後の04年4月に2度目の不渡りを出し、銀行取引が停止されたが、元幹部らは「02年ごろから決算を粉飾し、不渡りを出す数年前から債務超過に陥っていた」と話している。同社は現在、休眠状態という。
同社社長はこれまでの取材に対し、家族を通じて、「話すことは何もない」とコメントしている。
イー・エス・アイは00年1月に設立され、生ゴミ処理機の販売や、スーパーなどから出る生ゴミを堆肥(たいひ)化し、その堆肥で栽培した野菜を、再びスーパーなどで販売する事業など、循環型のリサイクル事業を展開していた。