健診は現在、企業や市町村、健康保険組合などが別々の法律に基づき実施しているが、主婦や自営業者らへの実施は義務づけられていない。新健診は、40歳以上のすべての人を対象に、国民健康保険や健康保険組合などの保険者に実施を義務づけるもので、08年4月の導入が決まっている。
厚労省は昨夏に暫定案を公表、今春までに検査項目を確定したい考えだ。しかし、案で検尿が「医師の判断で、選択的に実施する項目」になった。検尿には尿たんぱく検査のほか、潜血と糖を調べる検査があるが、いずれも選択になる。
厚労省生活習慣病対策室は「新健診は、本当に有効な項目だけに絞り込む必要がある。尿たんぱく検査が、腎不全や透析導入の予防に効果があるとの証拠はなく、必ずしも全員に行うことは有効ではない」と説明する。
これに対し、日本腎臓学会(理事長、菱田明・浜松医科大教授)は昨秋、尿たんぱく検査を必須項目に加える要望書を厚労省に提出。「腎臓病克服はもちろん、生活習慣病予防の徹底という点からも禍根を残す。検尿システムを破棄することは日本の医療の後退と言わざるを得ない」とし、折衝を続けている。
日本腎臓学会によると、国内に約25万人いる透析患者の約4割を占める「慢性糸球体(しきゅうたい)腎炎」は、尿たんぱく検査がきっかけで見つかるケースが多い。慢性糸球体腎炎の約半数を占める「IgA(アイ・ジー・エー)腎症」の約7割は、尿たんぱくの異常で見つかったとの報告もある。菱田理事長は「治療法の進歩で、腎炎は早期に見つければ進行を抑えられる。尿たんぱく検査がなくなると発見が遅れ、慢性腎炎や透析患者が増える心配がある」と話す。
尿たんぱく検査の有効性に関し、厚労省研究班の報告(04年度)があるが、「証拠は見つからなかった」としながらも、「結論は一定していない」としている。米国には、一般住民を対象に、毎年尿たんぱく検査を行う必要はないとの報告もある。