格差社会の拡大を指摘する声が強まる中、弁護団は憲法が国民の権利として定める「健康で文化的な最低限度の生活」の姿を正面から問う構え。
不利益変更の禁止規定は「正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない」というもので、弁護団は「国の一方的な通知による生活保護変更決定はこの規定に反する」としている。
老齢加算をめぐる同様の訴訟は京都、秋田、広島、新潟、北九州に次いで六例目となるが、首都圏では初めて。
今回の原告らは、昨年三月の老齢加算の完全廃止を不服として、生活保護法に基づく処分取り消しの審査を都に求めていたが、退けられた。
老齢加算は原則七十歳以上の生活保護受給者を対象に支給されていた。住居地により支給額は異なるが、大都市部では月額約一万八千円だった。高齢者が(1)消化吸収のよい良質な食物を要すること(2)暖房費や被服費、保健衛生費など身体的に特別な配慮を要すること−などが加算理由だった。
しかし、厚生労働省の「生活保護の在り方に関する専門委員会」が二〇〇三年、全国消費実態調査を基に七十歳以上の消費支出額が六十−六十九歳のそれより少ないことから「老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められない」と報告。これを受け同省は〇四年度から老齢加算の段階的削減に踏み切り、昨年度末で廃止した。
原告らは老齢加算の廃止により、年間支給額の約二割に当たる約二十万円の生活費が削られたと主張している。原告の一人=男性(77)=の場合では、〇三年まで月額九万四千円(住宅扶助を除く)だった支給額が約七万五千円に減った。弁護団は「高齢被保護世帯の生活に必要な支出が減ったという事実は認められず廃止のための合理的説明もなかった。憲法が保障する健康で文化的な生活の最低ラインとは何かを問いたい」としている。
老齢加算の削減・廃止をめぐる不服申し立てはこれまでに全国で一千五百件を超え、青森、埼玉でも同様の訴訟準備が進められている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070204/mng_____sya_____010.shtml