「増収の成果を視聴者に還元する」。橋本会長は会見でこう述べ、値下げを検討していく考えを示した。
値下げを否定してきた橋本会長が、値下げの検討に着手したのは、一連の不祥事の影響で落ち込んでいた受信料収入が増え、視聴者に還元できそうだからだ。
収入が回復傾向を見せる中、不払い者に対する法的措置を実施するなど、視聴者を締め付けるばかりでは反感を買うとの判断も働いたとみられる。
さらに、値下げを求める政治の声が強まってきたことも、今回の値下げ検討開始の背景にありそうだ。
受信料をめぐっては、菅義偉総務相が一月十日、二〇〇八年度から二割前後値下げすべきだとの考えを示した。この意向についてNHKは当初、「唐突な意見。政府・与党内でも同調者は少ないだろう」(幹部)とみていたが、同二十六日に開かれた自民党の通信・放送産業高度化小委員会(片山虎之助委員長)は、値下げで意見が一致。NHKの厳しい財政事情に理解を示していた片山委員長も、「(受信料)減額には異議がない」と値下げ容認の姿勢を見せた。
今後はNHKの二〇〇七年度予算案の国会審議が本格化する。NHKとしては当初、厳しい財政状況を説明し、受信料の現状維持に理解を求める方針だったが、値下げを求める声が政府・与党内で広がる中、「これにまったく触れないようでは国会を乗り切れない」(幹部)との判断に傾いたようだ。
いずれにせよ、NHKはまず今月中に、受信料の支払い実態が不透明なホテルや事業所について、新たな料金体系をまとめる方針。九月には値下げを念頭に視聴者への還元策を発表するが、値下げの実施時期や幅などについて、どこまで示せるか、現時点では極めて不透明。
受信料収入は回復傾向にあるとはいえ、ひとたび不祥事が起きれば、その影響で大幅な減収となるため、値下げは確約されたものとは言い難い。
さらに実施時期や値下げ幅をめぐっても、今後、さまざまな案が水面下で飛び交うことが予想される。
橋本会長は「二〇〇八年度、二割値下げには応じられない。この時点で時期については言えない」と言及を避けているが、いったん口にした値下げを取り下げれば視聴者の信頼を裏切ることになるのは言うまでもない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20070202/mng_____hog_____000.shtml