[原子力改ざん]「こんな“ごまかし”もあったのか」
過去のこととはいえ、こんなごまかしが原子力発電所で横行していたとは、驚く。
東京電力の柏崎刈羽、福島第1、第2原発で、安全性の根幹にかかわる機器の点検データ改竄(かいざん)など、多くの不正が過去にあったことが、社内調査で分かった。
またか、という声が出そうだ。
2002年の夏にも同じような改竄が相次いで発覚し、会長、社長が辞任に追い込まれている。今回は、複数の電力会社でダムの検査データなどに不正が見つかったことを受け、安全当局が、各社に調査を命じたのがきっかけだ。
その結果、関連法令に違反する恐れがあるものが3原発で199件あった。社内規定違反も多数に上りそうだ。
悪質な改竄もある。柏崎刈羽原発1号機で1992年に、緊急時用のポンプが壊れていたのに、正常と見せかけて国の検査に合格していた件だ。
原発は、異常時に、まず止めて、冷やす。さらに、放射能を閉じ込める。安全確保の3原則だ。問題のポンプは冷やす機能を担う。それが壊れたまま不正に検査を終え、原子炉も起動していた。
安全軽視の姿勢は指弾されて当然だろう。国の検査も、ザル同然だった。
ただ、いずれも、2002年の改竄事件よりも前の不正だ。この時は、社員の聞き取りより、書類検査が中心だったので見逃されたらしい。いずれも後に故障は修理されて、改竄もなくなり、今の安全性に影響はないという。
だが、どうして不正をしたのか、法律や規則を破る事態に至ったのか、徹底的に調べて、教訓とすべきだ。
02年の事件後、東電社内の点検体制は大幅に改革された。作業のチェックや記録の保存などが強化され、不正は起きにくくなっている。国の検査体制も刷新されて、専門の検査員による抜き打ち検査も実施されている。
もう容易に不正はできない。だからといって安全最優先の姿勢が薄れれば新たな検査体制でも、万全とは言えない。東電も、国も、改めて気を引き締めなくてはならない。
原発の検査は現在、13か月ごとに炉を止めたうえで、一律に決まった項目を調べている。これを欧米並みに、運転期間も、検査項目も、炉ごとに決める方式に改めることが検討されている。
今よりも柔軟に原子炉を運転でき、同時に、安全性も高くなることが、運転データから実証されたためだ。
これも、厳正な検査ができることが前提だ。ごまかし体質とは、完全に決別しなくてはならない。