携帯電話で手軽に自己紹介できる、「プロフ」と呼ばれるサービスが、女子高生の間で大流行している。というか、「知らぬは大人ばかりなり」で、彼女たちの間では今や「持っているのが当たり前」という存在のようだ。女子高生のライフスタイルに詳しいブームプランニングの調査によれば、日本の女子高生の半数近くがプロフを所有しており、首都圏では実に7割以上にも達する。
「プロフ」とはプロフィルの略で、携帯サイト上の記入式ホームページを指す。利用者は男子よりも、女子高生が多い。「前略プロフィール」や「マイプロフィール」などのサービスが、よく知られている。そこには氏名、年齢、住所から好きな食べ物やタレントまで、多種多様な質問事項が用意されている。その数は40〜100項目にも及ぶが、彼女たちの多くが几帳面にも、すべての項目に答えを書き込む。またトップには必ず、当人の顔写真が掲載される。
その結果、実に詳しい個人のPRページが出来上がる。少女たちはそれを、携帯端末の赤外線通信機能を使って、お互いに交換する。ちょうどサラリーマンが名刺交換するような気分らしいが、彼女たちが交換するものは、名刺とは比べ物にならない大量の個人情報を含んでいる。
プロフは個人に割り振られたホームアドレス上に記載されているので、それを知ってさえいれば、物理的には誰でも見ることができる。したがって、ある少女に関する詳細な個人情報が第3者の手に渡る危険性は当然ある。このためプロフの使用を禁止する高校もある。
しかし意外にもプロフによる事件は起きていない。それが出会い系サイトのように、社会問題化している様子はないのだ。その理由について専門家は次のように語る。
「プロフが使われるのは、高校生に限られている。彼女たちはそれを、親にも教師にもバイト先の店長にも教えない。あくまでも同世代の子たちの、手っ取り早いコミュニケーションツールとして使われている。つまり完全に閉じたネットワークを形成しているので、見知らぬ大人の介在する余地がない」(ブームプランニング代表取締役の中村泰子さん)
また仮に個人情報が第3者の手に渡ったとしても、最近の女子高生たちは怪しい人からメールが来るようになると、あっさりとアドレスを変更してしまうという。その辺の回避術、処世術には長けているようだ。
人づき合いをショートカット何か問題があるとすれば、むしろ最近の少女たちのコミュニケーションの変化ではないか、という。
「塾やお稽古事で忙しい彼女たちにとって、プロフで手っ取り早く相手を理解しようとするのは、ある意味で合理的かもしれない。しかし、そんなものだけで人を判断し、つき合う相手を限定するのはどうかと思う。人づき合いの方法をプロフでショートカットしているので、このまま大人になるとすれば、ちょっと心配だ」(中村さん)
実際、彼女たちと話してみると、対人コミュニケーションが極めて苦手だという。例えばしかられたり、注意されるのを極端に嫌がる。ケータイで、相手との間に、ワンクッション置くことに慣れているからだ。また少女たちの中には、違うプロフを何個か用意し、つき合う相手によって使い分ける人もいるという。
つまり「こっちのグループに対しては、こういう面を見せる」という姿勢だ。これも、ある程度合理的な処世術かもしれない。しかし、それをプロフにまでする労力を考えると「行き過ぎではないか」との見方もある。
「今の少女たちの会話を聞いていると、自己中心的で自意識過剰の面を強く感じるときがある。例えば会話の中にキャッチボールがない。自分を見せるだけで、相手の話を聞こうとしない。そうした中でプロフが登場し、彼女たちに受け入れられたのではないか」(中村さん)(小林雅一=KDDI総研・リサーチフェロー/2007年1月24日発売「YOMIURI PC」2007年3月号から)