キャンペーンでは、政府と企業が手口やルートなど偽物の情報を共有するのに加え、消費者に偽物には手を出さないよう啓発活動を展開する。税関の検査権限を広げる法改正もめざす。水際での監視を強化し、偽物の流入を防ぐ狙いだ。
インターネット上には、腕時計販売サイトは無数にある。一応「レプリカ(模造品)」とはうたっているものの、ロレックス、パテックフィリップなど本物のカタログ写真を無断で使っているものも。2万5000スイスフラン(約243万円)以上するロレックスの高級モデルが200ドル(約2万4000円)程度で売られている。スイス時計協会は偽物による損失を年間800万スイスフラン(約7億7700万円)と試算する。
生活習慣病やダイエット用の医薬品など、他のスイスの主要製品も電子メールなどで盛んに売り込まれており、偽造品が多い。食品、貴金属、たばこなど偽造品によるスイス産業界の経済損失は20億スイスフラン(約1942億円)に達するとされる。
スイス以外の偽ブランド品などの流入も悩みだ。税関当局によると、商標や著作権の侵害容疑で荷を調べた件数は00年の65件から05年には572件と9倍に。「原産地」は中国、タイ、米国、香港などで、スイス経由でEU諸国へ拡散していくらしいという。
欧州委員会の統計によると、EU諸国で押収された計7500万点(05年)の偽造品のうちスイス経由は5%。いまやトルコや香港などを抑え、中国に次ぐ第2位の「流出源」となっている。
EU加盟国との情報共有や取り締まりの連携が悪く、利用されやすいとの指摘も。税関担当のローランド・ヒルト部長は「EU諸国からは協力要請も情報提供もない。我が国を通過するだけの荷を厳しく取り締まるのは難しい」と現状を話す。