架空の投資話で500億円以上を集めた健康食品会社「リッチランド」(東京都北区)の詐欺事件で、同社に新規の投資家を紹介して紹介料を受け取っていた「販社」と呼ばれる出資者が、資金不足の高齢者や女性らに、消費者金融から借りた資金で、同社に投資するよう勧誘を繰り返していたことがわかった。
ほかに収入のない高齢者に、年金を担保に借金をさせた悪質なケースもあったという。
警視庁と静岡、福岡県警の合同捜査本部は、同社の幹部の一部はこうした手口を了承したうえで、出資金を受け取っていた疑いが強いとみて調べている。
同社は1999年秋ごろから、全国の一流ホテルなどで説明会を開催。同社会長の佐伯万寿夫容疑者(61)ら幹部とともに、新規の出資者を勧誘して出資金の2〜10%を同社から受け取っていた古参の出資者が、高額の配当を受け取った経験談を披露して投資を呼びかけていた。
複数の関係者によると、事業説明会後に開かれるパーティーなどの場では、こうした出資者が、「原資がない」「出資金は何口も払えない」などと渋る参加者に対し、消費者金融のパンフレットを見せながら、「年15%の利子を払っても、ここに預ければ倍になるので必ずもうかる」などと持ち掛け、申し込みを促していたという。
同社は、新規の投資家が出資した額に応じ、紹介者の紹介料が増えるマルチ商法特有のシステムを取り入れており、紹介料目当ての出資者が、定期収入のない高齢者に、年金などを担保に消費者金融から借金をするよう執拗(しつよう)に勧め、投資させていたケースもあった。
このため、出資者への高額の配当が滞るようになった2005年春以降、同社や顧問弁護士に寄せられた問い合わせの電話や手紙の中には、「高利貸しから600万円を借りてまで申し込んだ。配当がストップすれば、生計が立ちゆかなくなる」「高金利で借金した出資者にとって、もう時間がありません」という切実な訴えも少なくなかったという。
その一方で、佐伯容疑者の妻は05年ごろまでに総額約1億2000万円の配当を受けるなど、同社幹部の周辺者は多額の配当や紹介料を受け取っていた。
捜査本部は、逮捕した計17人の同社幹部や古参の出資者も、自らの利益目当てに、悪質な勧誘を繰り返していたとみて追及している。