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2007年01月30日(火) 15時35分

「沈没船すでに発見」リッチランドが出資者に虚偽文書読売新聞

 架空の投資話で500億円以上を集めた健康食品会社「リッチランド」(東京都北区)の詐欺事件で、投資先の一つとされる沈没船の引き揚げ事業について、同社は一昨年6月に警視庁に出資法違反容疑で捜索を受けた後、多数の出資者に「沈没船を既に発見した。引き揚げれば最低でも元本を保証できる」などと説明した文書を配布していたことが分かった。

 警視庁などの合同捜査本部は、同社が、警察の強制捜査をきっかけに、出資金の返還騒ぎなどに発展するのを恐れ、摘発を免れるため虚偽の説明をしたとみて調べている。

 これまでの調べによると、同社は、約1万人に上る出資者に対し、東欧の不動産事業などへの投資話のほか、陶磁器などアジアの財宝を積んだままインドネシア・アチェ沖に沈没したとされるオランダ貿易船などの引き揚げ事業を投資先として説明。数々の財宝を探り当てたことで知られるオーストラリア人男性に引き揚げ作業を依頼したとして、「5年後に預かり金が倍になる」などと高配当を約束していた。

 しかし、2005年春ごろから出資者に約束した配当が滞るようになり、出資者から相談を受けた警視庁の捜索が05年6月に入ったことをきっかけに、同社への問い合わせが急増した。同社はこの年の10月、会長の佐伯万寿夫容疑者(61)と顧問弁護士の連名で、「05年10月にオーストラリア人男性と引き揚げ事業を再開することで合意した」などとした文書を出資者に配布。昨年10月にも、「06年6月に沈没船が見つかった」「07年3月ごろまでに沈没船の品物をオークション会社に納入した段階で、保証金10%くらいが入る」とした文書を送っていた。

 これに関し、同社の顧問弁護士は、読売新聞の取材に「インドネシア政府の全面的な協力を得ている」などと回答していた。

 しかし、読売新聞が同国の海洋水産省に確認したところ、沈没船は昨年末の段階でも全く発見されておらず、引き揚げ事業にあたっているとされるオーストラリア人男性についても、同社が説明文を出資者に配った05年10月の時点では、「ほかの財宝を勝手に持ち出した」との理由でインドネシアへの入国禁止処分が出されていたことが判明した。

 アチェ沖を管轄するナングロアチェ・ダルサラム州政府の責任者も、政府の許可が必要な財宝探しについて「許可取得の通知書が届いていない。政府の担当者にも問い合わせたが、許可の事実はなかった」と話している。

 同様の事実は捜査本部も把握しており、強制捜査で不安に駆られた会員が、出資金の返還を求めることを抑え込もうと、同社がウソを伝えていたとみられる。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070130itw7.htm?from=top