まず驚くのが、起動の速さだ。完全に電源を落とさない「スリープ」の状態が標準となるため、電源ボタンを押すと5秒ほどで立ち上がる。
低価格版(ホーム・ベーシック)を除いたものに搭載された「エアロ」と呼ばれる新機能も目を引く。複数の画面を開いても3次元で流れるように表示され、目的の画面を探しやすい。マイクロソフト社の飯島圭一氏は「視覚効果だけでなく、仕事をする上でも便利な機能」と胸を張る。
【使い勝手は?】
パソコン内にあるファイルの検索機能が進化している。スタートメニューの検索窓にキーワードを打ち込むと、メールや文書、画像や音声などから一瞬で該当するファイルが表示される。
「平均的なビジネスマンが検索に使う時間は年100時間といわれていますが、私の実感では、ビスタで検索時間が10分の1になります」と飯島氏。
写真や動画の編集、整理もビスタの標準機能で簡単にできる。
【仕事で使える?】
文書作成ソフト「ワード」や表計算ソフト「エクセル」、プレゼン用資料作成ソフト「パワーポイント」も使いやすくなり、見栄えのいいグラフや資料を作れる。
別のマイクロソフト関係者は「社内で作る資料のレベルが上がった」という。
ウイルスやフィッシング詐欺対策などセキュリティーも強化されている。
【家庭では?】
リビングにパソコンを進出させ、デジタル家電と融合させて生活を充実させるのもビスタの狙いの1つだ。薄型テレビと接続し、パソコン内やネット上の動画、音楽ソフトをリモコン1つで楽しめる。
【本当に新しい?】
こうしたビスタの機能について、他社のソフトやOSですでに実現済みのものが多く、画期的な新機能はないとの指摘もある。ただ、ITジャーナリストの大河原克行氏は「的を射ている部分もあるが、ビスタはそれを感じさせないほどパソコンの快適な利用を大きく進化させている」と評価している。
【導入法は?】
ビスタが入ったパソコンを買うのが近道だ。30日以降、10万円台後半−20万円台を中心に新製品が一斉に発売される。
また、ビスタを単体で買い、手持ちのパソコンにインストールする手もある。ビスタの上位版である「ホーム・プレミアム」(XPからのアップグレード版)が1万9800円となっている。
ただ、注意も必要。先の大河原氏は「プレミアムの場合、2年以上前に買ったパソコンなら(パソコンそのものを)買い替えた方が快適な動作が保証される」と指摘。低価格版も「4年以上前のパソコンなら買い替えがお勧め」という。
【買い替えは進む?】
国内ではパソコンの販売不振が続いており、メーカー各社は買い替え需要を期待する。が、「企業も導入に慎重で、本格化は早くても今年後半からだろう」(大河原氏)とみられている。
マイクロソフト社がXPのサポート期間を当初の平成21年から26年まで延長すると発表したこともあって、当面はXPとビスタが併存しそうだ。あわててビスタに飛び付く必要もなさそうだが、今のパソコンにストレスを感じている人には購入を検討する価値はありそうだ。
■OSとは
オペレーティング・システムの略。コンピューターを動かすための基本ソフトで、キーボード入力や画面出力の制御、ディスクやメモリなどハードウエアの管理も行う。
マイクロソフト社はこれまで、「MS−DOS」「ウィンドウズ95」「同98」「同XP」などのOSを販売し、パソコン市場で90%以上のシェアを占めている。
個人向けの「ビスタ」は4タイプ。最上位の「アルティメット」、上位の「ホーム・プレミアム」、仕事用の「ビジネス」、低価格版の「ホーム・ベーシック」がある。
ZAKZAK 2007/01/29