発生が疑われている養鶏場があるのは、山あいの国道沿い。白っぽい平屋の鶏舎が並ぶ。鶏舎のそばにある経営者の男性宅は明かりが消え、ひっそり。
男性は電話取材に、疲れた声で飼育の鶏が死んだことを認めたが「詳しいことは県に聞いてほしい」と話した。
近所の人の話では、養鶏場は経営者夫婦と手伝いの女性の三人で運営しているという。
岡山県によると、周辺には十五の養鶏場などがあり、主に採卵用の鶏を飼育している。
養鶏関係者は不安をぬぐい切れない。高梁市の鶏卵販売店の店主は「まさか岡山に来るとは。鳥インフルエンザなら本当に困ってしまう」。市内のブロイラー飼育業者の妻(35)は「本当だったら売り上げが落ち、仕事がなくなるかもしれない。怖い」と話した。
養鶏業者でつくる岡山県養鶏協会(岡山市)の金井克己事務局長は「県から連絡を受けた。間違いであってほしいが…。風評被害もあわせ、どう対応するか、県と相談するしかない」と苦渋の表情を浮かべた。
県は半径十キロ以内の鶏や卵などの移動自粛を要請。自粛圏内に二つの養鶏場を経営する男性は「どこで出てもおかしくないと思っていた。三年前に山口県などで発生してから防疫を強化し、防鳥ネットを備えるなどしてきたが、それだけで防げる保証はないし…」と困惑していた。
■市場流通なし 専門家は評価
岡山県高梁市の養鶏場で二十七日、高病原性鳥インフルエンザの疑い例発生が明らかになったことについて、専門家は「渡り鳥が持ち込んだ鳥インフルエンザと考えられる。西日本の鶏は危険にさらされており、養鶏場などは警戒が必要だ」と指摘している。
大槻公一・京都産業大教授(獣医微生物学)は感染源について「宮崎県清武町と同県日向市で発生した二件の鳥インフルエンザ同様、中国北部やモンゴルなどからの渡り鳥がウイルスを持ち込んだ可能性が高い」とみている。
伊藤寿啓・鳥取大教授(獣医公衆衛生学)も「宮崎県からの二次感染とは考えにくい」として、大陸から個別に入ってきたとの見方を支持する。
自然の野鳥が相手となると、対策は難しさを増す。大槻教授は「今後、西日本はどこで発生してもおかしくないと考えた方がいい」と話す。
大槻教授は一方、養鶏場側の素早い対応を評価。「宮崎も岡山も通報が早かったため素早く対策を講じることができた。流通している鶏肉や卵には全く問題なく消費者は安心していい」と冷静な対応を呼び掛けている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070128/mng_____sya_____013.shtml