出生率の低下が続く中、2030年以降は若年人口の大幅減が予想されることから、政府は効果的な少子化対策の再構築を迫られている。このため、首相は26日の施政方針演説でも「子供は国の宝です。安心して結婚し、子供を産み育てることができる日本にしていかなければなりません。少子化に対し、更に本格的な戦略を打ち立てます」と表明した。
人口減に歯止めをかけなければ税収や労働力に跳ね返ることから、首相はすでに塩崎官房長官に本格的な検討を指示。従来の少子化対策が児童手当や育児休業給付など経済的支援が中心だったのを転換する考えだ。首相の持論である「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)を重視し、子育て家庭を支える地域づくりなど社会を挙げて取り組む態勢を整えるため、財源も含めた具体策を打ち出す意向だ。
この会議は、塩崎長官(議長)ら関係閣僚のほか、有識者や労使の代表などで構成。その下に(1)基本戦略(2)働き方の改革(3)地域・家族の再生(4)点検・評価の4分科会を設け、議論を重ねていく。
「基本戦略」では、育児休業中の所得保障など財源を含めた経済支援のあり方を検討。「働き方の改革」で子育てしながら働ける環境づくりを提唱し、若者の自立支援策などを示す。
また、「地域・家族の再生」では、児童虐待対策も含め、母子家庭など困難な状況にある子どもを地域で支える対策を検討。「点検・評価」で、政府や地方自治体のこれまでの取り組みの点検や見直しにあたる。
政府が昨年まとめた「新しい少子化対策」では、児童手当の乳幼児加算など40項目の対策を列挙した。しかし財源のあてはなく、新年度の乳幼児加算は緊急雇用創出特別基金の余剰金活用という一時しのぎに過ぎない。さらに「総花的で目指すべき社会のグランドデザインが描けていない」との批判もあった。
新設する会議では、労働法制や財源のあり方も含めて総合的な戦略を打ち出すために、政府全体として取り組む姿勢を示す。そして、子育てに適した環境整備を含めた支援策を盛り込んだ「骨太の方針」を閣議決定することで、実効性を高める考えだ。
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「子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議」のメンバーは以下の通り。
【閣僚】官房長官=議長、少子化担当相、経済財政担当相、総務相、財務相、文部科学相、厚生労働相、経済産業相、国土交通相
【有識者】吉川洋・東大大学院教授=基本戦略分科会担当主査、樋口美雄・慶大教授=働き方の改革分科会担当主査、岩渕勝好・東北福祉大教授=地域・家族の再生分科会担当主査、佐藤博樹・東大教授=点検・評価分科会担当主査
【労使】池田守男・日本経団連少子化対策委員長、古賀伸明・連合事務局長
【現場】清原慶子・東京都三鷹市長