温暖化問題をテーマにした分科会は17もあり、どれも満員。事務局によると「これまでで最も環境志向の会議」になった。開会直前、ブッシュ米大統領が一般教書演説で気候変動に立ち向かう姿勢を見せ、雰囲気がさらに盛り上がった。
かつて温暖化防止の国際条約交渉を担当した米国の国連財団総裁、ワース氏は分科会で、米大手エネルギー企業が二酸化炭素(CO2)排出を総量規制したうえで排出枠を取引できる「キャップ・アンド・トレード」制度を支持し始めたのが「大きな変化」と語った。同制度はこれまで、「経済を失速させる」と米産業界が強く抵抗してきたものだ。
米大手エネルギー企業デューク社のロジャース社長は「米発電業界の経営者の8割は、CO2排出が厳しい制約を受ける時代を覚悟している」と話す。議定書離脱の頃のような、温暖化自体を「科学的に不確実」とする声は聞こえない。
ハリケーンや竜巻、干ばつ、洪水、熱波、寒波。「変化」の背景にはここ数年、異常気象による自然災害が大規模化してきた現実がある。
米ウッズホール研究センターのホルドレン所長は「今や気候変動ではなく、気候崩壊だ」。再保険最大手の最高経営責任者によると、「温暖化防止コストの方が被害に伴うコストよりもはるかに安い」という。
01年の世界同時テロ以後、中東石油への依存の危うさも明らかになり、バイオ燃料や太陽光、風力発電など再生可能エネルギーの議論につながっている。原発産業が勢いづいている様子もうかがえる。CO2削減が避けられないなら、新技術や排出枠取引で利益を、という流れが米国を巻き込み始めたようだ。
だが、「なぜこの議論が6年前のダボスでできなかったのか」という冷めた声もある。京都議定書でCO2削減義務を負う西欧諸国や日本では、議定書が完成した01年から議論がずっと続いているからだ。
企業経営の温暖化リスクの分析や助言をする米国の非営利組織代表、ミンディー・ルバーさんは「アメリカ人が温暖化に恐れを持ったのは(ハリケーン)カトリーナなのです」と話した。