卵子バンクのしくみ
日本には、生殖医療に関する法律はない。しかし、第三者への卵子提供について、日本産科婦人科学会は指針で認めておらず、厚生労働省審議会も03年にまとめた生殖医療に関する報告書で、営利目的の精子や卵子提供を禁止している。事実上、国内で医師の協力は見込めない。
03年に韓国の業者が卵子バンクの営業所を日本に開いたことがある。しかし、韓国で精子、卵子の売買を禁止する生命倫理法が施行された05年1月の直前に撤退した。
このほか、連邦法に取り決めがなく、カリフォルニア州など生殖医療ビジネスが盛んな米国の業者へ仲介する日本の業者もある。
卵子バンク事業を始めたのは「エクセレンス」。もともと輸入代行業をしていた佐々木祐司代表が個人で運営し、96年から有償で精子のあっせんもしている。ドナーはホームページで募集。ドナーと、卵子購入を希望する夫婦が面会した後、一緒に韓国へ行き、ソウル近辺の病院で採卵する。夫の精子と体外受精し、妻の子宮に移植する。帰国後、妊娠してもしなくても報酬100万円を払う。韓国では、両国で生殖ビジネスの経験がある女性が、病院紹介や通訳を務めるという。
ドナーは、身長や体重、学歴などを申告し、写真を提出。要望があれば、体のスリーサイズも教える。ドナーと、生まれた子どもの間には、一切の権利義務関係はないことを、双方の契約書で確認する。夫婦側の負担は、ドナーへの報酬のほか、契約金180万円、病院での費用約30万円などを含め、400万円近くになる。米国の場合、500万〜600万円という。
生命倫理法について、佐々木代表は「契約や金銭のやりとりは日本で行われるので、法律上、問題ない。日本人の卵子がいいという顧客の要望にも応えられる」と主張している。