お笑いタレントから、県政トップの座へ——。21日投開票された出直し知事選は、そのまんま東氏が混戦を制して初当選を果たした。前知事ら県幹部7人が逮捕された官製談合事件がきっかけになった選挙。全国区の知名度を誇る新しい知事が、未知数の行政手腕で、県政の刷新と立て直しをどう進めるのか。県民が一票に託した思いは重い。
「当選確実」の知らせに、宮崎市のホテルに集まった東氏の支援者らは躍り上がって喜んだ。
27年間過ごした芸能界を離れ、「宮崎に骨をうずめる覚悟」で挑んだ知事選。芸能人の応援や派手なパフォーマンスに頼らず、「政治家・そのまんま東」を地道に訴える作戦が功を奏した。
政党や組織に支援を求めず、カネも極力かけない「手作り選挙」に徹した。大半のスタッフは知人や学生時代の同級生が集めたボランティア。宮崎市の事務所には、満足な駐車場もなかった。
過去の不祥事については「猛省している」と何度も頭を下げた。抜群の知名度と巧みな話術で支持を広げ、2人の保守系候補と三つどもえの戦いを展開。数値目標を盛り込んだマニフェストを掲げた訴えは、県政の刷新を望む多くの有権者の心をつかんだ。
「私の力不足。申し訳ございません」。川村秀三郎氏は宮崎市芳士の事務所で、支持者を前に何度も頭を下げた。
綾町生まれの前林野庁長官。しかし県内で過ごしたのは幼少時代まで。立候補表明が遅れたこともあり、知名度不足が課題だった。県内の町村長や地元・綾町民、鹿児島のラ・サール高校同級生らが活発に動いたが、浸透しきれなかった。
「しがらみのなさ」を各候補が訴える中、「国家公務員として公平公正中立を30年間貫いてきた。選挙でも特定の企業や団体の献金は一切受けていない」とクリーンさを強調。「県政の混乱は危機的状況。これまでの宮崎を脱ぎ捨て、新しい宮崎を打ち立てるには猶予がない。私なら明日からでも知事として働ける」と即戦力ぶりをアピールしたが、及ばなかった。
持永氏は敗色が濃厚になった午後9時すぎ、宮崎市橘通東1丁目の事務所に姿を見せ、支援者ら一人ひとりに頭を下げて回った。涙声で謝罪を繰り返す持永氏に、支援者から「持永さんは悪くない」との声が飛んだ。
自民、公明両党の推薦に加え、農民連盟や県漁連など県内の各種業界団体の推薦もとりつけ、保守一本化の盤石の態勢で臨んだ選挙戦だった。しかし自民の一部が遅れて立候補した川村氏の支援に回り、保守勢力が分裂。川村氏と票を奪い合う形になった。
選挙戦では、積極的な企業誘致や団塊世代を中心とした移住政策を打ち出し、県内の農産品を全国やアジアに売り出すことで県内経済を活性化させるとの持論を展開。所得増加や雇用の確保につなげると訴えた。また、クリーンな県政運営を掲げ、「しがらみを一掃しよう」と呼びかけた。
共産党県委員長の津島忠勝氏は午後9時すぎ、宮崎市清水3丁目の事務所に現れた。自宅で休んでいて、支持者から電話で「東氏当確」のニュースを知らされたという。報道陣に「残念だが、やれることはやった」と笑顔もみせ、「我々もしがらみのない政党なのだが。党としても個人としても引き続きがんばりたい」と語った。
「汚れた県政の大掃除」を掲げて挑んだ選挙戦では、都市部の住宅地や団地を重点的に回り街頭演説を重ねた。一貫して利権やしがらみからの脱却を訴え、腐敗した県政を批判。しかし幅広い層からの支持獲得はならなかった。
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