[NHK受信料]「『義務化』に見合う内部改革を」
徹底したNHKの内部改革あっての「義務化」であろう。
政府が通常国会に提出する放送法改正案に、NHK受信料の支払い義務化が盛り込まれる見通しとなった。
テレビなど受信設備の設置者の受信料支払い義務が明記される。罰則はないが、遅延した場合の延滞金・割増金制度の導入が検討されている。
狙いは不払い者の縮減だ。約4600万の契約対象世帯・事業所のうち、契約自体を拒否するなど未契約は1000万、支払い拒否・保留も100万件ある。支払い率は7割にとどまっている。
総務省によると、義務化で相当数の不払い者が支払いに転じるとみられ、残る不払い者への支払い督促も容易になるという。その結果、NHKの受信料収入も増え、国民の不公平感も解消される。
一方で、「国営放送化を招き、公平な報道や自由な番組制作が困難になる」として、義務化に反対する声もある。
これはあまりに極端な意見だ。英仏独伊、韓国などの主要国では、どこも公共放送の受信料支払いが義務化されている。不払い者に罰金、刑務所収監などの罰則を設けている国も少なくない。義務化はごく普通のことだ。
「身を削る内部改革が見えないのに、義務化は性急だ」との批判もある。かなりの人に共通する思いだろう。
不払い者急増の責任が、番組制作費の使い込みや不正経理処理など、不祥事続発のNHK自身にあることは明白だ。最近も職員の大麻所持や万引き事件などが起きている。不祥事を理由に不払いに転じた人たちが納得できるような、目に見える体質改善には至っていない。
今回の放送法改正は、昨年6月の「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」に基づくものだ。そこでは、「NHK内部の改革」を進めた上で「受信料引き下げ」と「支払い義務化」を早急に検討するという、いわば“3点セット”の改革の方向性が示された。
改正案には経営委員会の抜本改革や外部の会計監査の義務づけなども盛り込まれる。チャンネル数削減や子会社の整理・統合など経営スリム化も、総務省はNHKに働きかけていく。同時に受信料の2割程度引き下げも要請する方針だ。
NHK側は受信料下げには難色を示す。音楽・芸能・スポーツ分野の制作部門の子会社化案にも、幅広い番組の制作・提供が公共放送の役割だとして反発している。視聴者はどう考えるだろう。
法案審議を通じ、国会には、公共放送とは何か、という根本の問題にさかのぼって、深い論議をしてもらいたい。