「ベテランのパート従業員の判断だった」と釈明した前回の会見とは一転し、藤井社長は「組織ぐるみと言われかねない問題があった」と説明、引責辞任を表明した。
しかし、新たに判明した問題については「確認できていない」を連発し、社内の危機管理体制のずさんさもさらけ出した。
藤井社長は東京都中央区銀座の本社で、百人以上詰め掛けた報道陣を前に「責任者として辞任したい」と辞意を表明。「深くおわび申し上げる」と頭を下げた。
この日の会見で、同社埼玉工場で消費期限や賞味期限の切れた原料を使用した例が新たに十八件分かり、うち二件が同工場の幹部から部下への指示だったと発表した。
しかし、どの商品をどれだけ生産したかは把握しておらず、具体的な指示の内容については「幹部の名前が特定される恐れがある」などとして明らかにしなかった。
さらに同工場で消費期限を社内基準より一日多く表示することが頻発していた問題では、工場長以下の幹部が全員容認していたとしながらも、藤井社長は「意図的なのかどうかといえば、若干意図の方に入るのかなあ。どうして始まったのか、今はお答えできない」と言葉を濁した。
藤井社長はこれらの問題について「深刻な問題。社員の教育をやっていきたい」と語り、会社の体質には「倫理観が薄いという問題がある」と肩を落とした。
会見は三時間近く行われ、藤井社長ら三人の幹部は記者からの質問に応答。藤井社長は言葉を詰まらせながら「(店頭に立つ)ペコちゃん人形のように、つらい日でも雨の日でも…」と経営再建に向けた思いを語った。
■『客侮った結果』怒りや落胆の声
「消費者を侮った結果」「辞めれば済む問題ではない」。期限切れの原料使用が次々に明るみに出ている不二家。東京・銀座では十五日、客や消費者らから怒りの声が上がった。
親族がフランチャイズ店を経営しているという東京都港区の主婦(66)は「夜遅くまで働いている姿を見ているので、本当に悔しい。書き入れ時のクリスマスから成人式が終わって、フランチャイズ料を回収してから問題を認めたことも許せない」と憤った。
「ちょっとぐらいならいいやという感覚があったのでは」とは葛飾区の男性会社員(56)。横浜市の主婦(60)も「これだけ食品の安全に対する意識が高まっているのに、老舗のメーカーがなぜこんなことを」とあきれた表情を見せた。
銀座にある不二家の系列レストランは洋菓子の販売停止後も営業を続けるが、客足は通常の四割足らず。女性店員は「影響は大きく、残念なこと。お客さんが戻るよう、会社にはきちんと対応してほしい」と話した。
街頭の電光掲示板に社長辞任のニュースが流れると、洋菓子販売店のシャッターに張られたおわびの文章をあらためて読む人も。「小さいころから親しんだ不二家がつぶれたら悲しい。思い出の店が残るよう、徹底的に体質を改善してほしい」とさいたま市の主婦(38)は話した。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070116/mng_____sya_____010.shtml