テレビ朝日はこのほど、KDDIと連携して調査した「ワンセグ(携帯端末向け地上デジタルテレビ放送)」の利用動向結果を公表した。約100万台のワンセグ受信機能付きau携帯を対象とした国内初の大規模調査で、不透明と言われる「放送・通信の連携」ビジネスの将来像は見えたのか。担当した西氏に聞いた。
広告主サイトへの「ショートカット」として機能西 忙しい現代人から4時間も「新しい時間」を手に入れたことは大きいと考えています。そこに新しい市場があると考えています。移動中に見ていただくので、1回当たりの視聴時間は大きくは伸びないと思います。今後は視聴回数をいかに増やすかがカギですね。国民的スポーツの生中継や災害時に視聴者が多いのは、放送されている中身を視聴者が知っているからです。まず何を放送しているかを知ってもらうことが重要です。あとはソフト作り。将来、ワンセグの独立編成が可能になるなら、そこからが正念場です。
西 ワンセグを紹介する30秒のインフォマーシャル(情報量の多い広告)を放送したところ、データ放送から興味深いデータが得られました。放送後30秒間残っていたスポンサーサイトへのリンクよりも、1分半残っていた番組公式モバイルサイトへのリンクからのアクセスが3〜4倍多かったのです。理由は2つ考えられます。1つは、端末を横にして全画面で見ていた視聴者が、データ放送が見られる縦位置に変えて、クリックするまでに時間がかかった可能性。もう一つは、固定テレビを視聴していた視聴者が、放送後にワンセグを起動させて、関連サイトへのショートカット手段としてワンセグを使った可能性です。この実験は24時過ぎという深夜に実施したため、後者のケースも多かったとみています。
西 Eコマースに関する実験でも、その傾向は強く出ています。ショッピング番組に番組連動のデータ放送を付け、ワンセグからの接続状況を調べたところ、販売サイトに接続した利用者の割合は、固定テレビの200倍に達しました。実際に購入した人の割合も57倍。空メールなど、携帯電話を使った従来型の告知に比べて圧倒的に誘導効率が高いのです。抽象的なニーズを掘り起こすテレビ広告と、具体的な購買に結びつけるネット広告が同居しているワンセグの誘導効果は予想以上でした。