◇社長「体質に重大な問題」
「調査してお答えします」
15日、東京・銀座の本社で開かれた不二家の記者会見。報道陣に配布された資料には、これまで明らかになっていた牛乳やリンゴの消費期限切れ原料の使用とは別に、新事実が次々と並んだ。ジャム、生クリーム、卵など新たな期限切れ原料の使用、1日長い消費期限の表示の頻発……。
しかし、対応した幹部はしどろもどろだ。「消費期限切れの18件の原料は何に使われたのか。何個出荷されたのか」と聞かれても、担当課長は「細かな数字はわからない。調査してお答えします」と繰り返すばかり。「使用を指示した上司は、具体的にどんな役職なのか」との質問にも、「調べている」と答えるだけだった。
一連の問題の発端は、「(06年)11月7日消費期限の牛乳4ロット分を11月8日に使用した」との社内告発があったことだ。同社は11月中にこの事実を把握し、対策会議まで開いていた。
ここで幹部は二つの判断を誤った。
一つは公表を見送ったことだ。「公表すべきだ」と言う幹部はいなかったという。11日の1回目の記者会見での発表は、マスコミ報道に押されてのものだった。
同社はここ数年、少子化などの影響で業績不振が続き、昨年5月に発表した2カ年計画で、再建に取り組んでいるさなかだった。食品業界は、雪印乳業食中毒事件、牛肉偽装事件などで、速やかな情報公開が企業の生命線になることを学んでいたはずだった。
コンプライアンスの専門家は「速やかな公表は、会社の信用を維持し、損害の拡大防止とするための経営者の義務でもある。不二家は過去の教訓を生かせず、公表の重要性を認識していなかったのだろう。クリスマス商戦だったこともあったかもしれないが、判断が鈍いという印象だ」と指摘する。
「内部告発者の保護など、隠蔽(いんぺい)体質を解消するための具体策はないのか?」。15日の会見でこう質問されると、藤井社長は「社員の倫理観に頼るしかない」と抽象的な答えにとどまった。
もう一つは調査不足だ。昨年11月、社内で問題が発覚してから、調査を担当したのは構造改革プロジェクトチーム。しかし、2カ月かけて確認できたのは期限切れ牛乳やリンゴ加工品の使用のみだった。
15日に明るみに出た新事実は、同社が13日から、埼玉、札幌など5工場でヒアリングや記録のチェックなどをして判明したものだった。当初から、調査対象を広げたり、徹底した調査をしたりすれば、不信の拡大は防げたかもしれない。
「組織の立て直しが必要だ」。辞意を表明した藤井社長は振り返った。
http://www.asahi.com/national/update/0115/TKY200701150336.html