[家電リサイクル]「回収率を上げる対策を急がねば」
不用家電を回収して、資源に再利用する家電リサイクル制度の見直しが難航し、結論を半年延期した。論点は絞られつつある。論議を加速すべきだ。
家電リサイクル法は、2001年4月に施行された。ブラウン管テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機、エアコンの家電4品目が対象だ。
消費者が家電を廃棄する際に、リサイクル費用を負担し、小売店や自治体などが廃家電を回収する。それを製品メーカーが引き取り、鉄、ガラス、アルミなどを取り出し、再商品化に役立てる。
リサイクルは、そんな仕組みだ。ゼロからのスタートだったことを考えれば、かなり定着したとも言える。
環境省と経済産業省は、5年後に制度を見直す規定により、法改正を検討してきた。だが、結論が出ず、通常国会への改正案の提出を断念した。
廃家電の回収率が5割にとどまる現状をどのように解決するか、効果的な対策が定まらなかったためだ。
家庭から廃棄される家電4品目は、年間約2300万台と推計される。このうち、約1100万台の行き先が分からない「見えないフロー」の問題である。
その大半は、産廃業者が処理したり、中古品として国内販売や輸出に回っている模様だ。一部は不法投棄される。
制度見直しの最大の目的は、回収率を高めることだ。「見えないフロー」の実態や理由を解明し、廃家電がリサイクルの正規ルートから外れない方策を検討しなければならない。
料金の徴収時期では、消費者が廃棄時に払う現行の後払い方式の継続を求めるメーカーと、購入時の前払いを主張する小売店などが対立している。
背景には、価格設定の主導権争いもうかがえる。前払いに変更して、「見えないフロー」が減るかどうか。徴収時期の変更の是非は、リサイクルを円滑に進める観点から、考える必要がある。
対象範囲の拡大もテーマだ。薄型テレビ(液晶とプラズマ)の出荷台数が、ブラウン管テレビを上回り、今後、薄型テレビの買い替えや廃棄が増える。それに備え、薄型テレビも対象に加えたい。
家電の大きさにかかわらず、リサイクル料金が同じ現行ルールは、費用負担の公平感を欠く。当初から据え置かれている料金水準の再検討が必要だ。
不法投棄を防止するため、産廃業者などの取り締まりも強化すべきである。
資源を有効活用するリサイクルは時代の要請だ。消費者の理解を得て、混乱を招かない改善策をまとめてほしい。拙速は良くないが、先送りも許されない。