[鳥の感染症]「拡大を阻止する対策は万全か」
宮崎県の養鶏場で鶏が大量死した。農林水産省は強毒性の鳥インフルエンザの疑いがあるとして緊急対策に乗り出した。
国内では2004年に79年ぶりの鳥インフルエンザが山口と大分、京都の3府県で確認され、一昨年も茨城県で大規模感染が起きている。
いずれのケースも感染を最小限に食い止めることができず、茨城県では終息させるまでに約1年かかった。政府や自治体の対応が手探りだったうえ、養鶏業者の情報隠しもあったためだ。
今回は封じ込めに万全を尽くし、速やかに終息を目指さねばならない。
すでに、感染が見つかった養鶏場と周辺半径10キロ・メートル内の養鶏場では鶏の移動を止めている。警戒線を設けて人の立ち入りも制限している。生活に支障も出るだろうが、漏れのないよう関係機関と事業者が連携することが求められる。
宮崎県はブロイラーの飼養数が日本で最も多い。風評被害も警戒が要る。鶏肉や卵を食べた人が感染した例はない。無用な心配を広げないようにしたい。
まだウイルスの分析は終わっていないが、感染した鶏の処分など、防疫作業に当たっては、人への感染も十分に注意しなくてはならない。
この養鶏場では、3日間に2400羽が死んでおり、急激な症状から、ウイルスは毒性の強い「H5N1型」と見られている。04年に3府県で確認されたウイルスも同じだった。
ここ数年、アジアを中心に世界に拡大しているタイプだ。人に感染する例が相次いでいる。インドネシアなど、家庭で鶏を飼うことが日常的な地域で感染例が目立ち、世界保健機関(WHO)の集計では、世界で計264人が感染して158人が死亡している。
感染ルートの解明も重要だ。まずは渡り鳥が疑われる。香港では、ウイルスに感染した渡り鳥も見つかっている。
韓国では昨年11月に鳥インフルエンザが2年半ぶりに流行した。中国では人の鳥インフルエンザ感染が後を絶たない。こうした地域から人が持ち込む恐れもあり、国際的な取り組みが欠かせない。
だが、中国は、関連する情報をWHOにも積極的に提供せず、国際的に批判を浴びている。拡大を防ぐため、各地の感染状況の監視や情報交換について、改めて協力を呼びかけるべきだ。
鳥インフルエンザは、鳥類間での流行が続くうちに人から人へ感染を広げる新型ウイルスに変異する可能性が指摘されている。そうなれば、日本でも最大で4人に1人が感染し、数十万人が死亡するという推計もある。警戒は怠れない。